コロンビアで暮らす元303社員、ユースケ“丹波”ササジマが現地に暮らす市井の人々にインタビューしていく連載企画。今回も引き続き、大学で国語講師として働くベアトリスさんのインタビュー。生まれ育った場所やパートナーの方との関係ついて話していただきました。
夕立のアンティオキア ―パイサの生き方―
ユースケは何しにコロンビアに?
生まれ育った街が好き
ちなみに、先生って出身ってどちらですか?
コパカバナ市っていうメデジンの北のほうにある小さい街で生まれて、今までずっとそこで暮らしてるわ。
そうなんですね、でも先生が講座を持っている大学とか企業はメデジンですよね? メデジンまでの通勤手段はなんでしょうか?
最近まで車で通勤してたんだけど、売っちゃったの。だから、今はバスとかメトロを乗り継いて通勤してるわ。ただ、時間がないときはタクシーも使うわね。いろんな大学で働いてるから、あまり移動時間を十分にとれないことがあるから。だから、通勤手段を状況によるわね。
なるほど。でも、なんで車売っちゃったんですか?
絶望的に運転に向いてないっていうことが発覚しちゃったの(笑)。
それは売って別の手段で通勤するほうがいいですね・・・。住んでる街からメデジンまでは大体何分くらいでしょうか?
45分くらいかしらね。あまり遠くないわよ。あなたはコパカバナは行ったことない?
北の方は何回か行ったことありますけど、その街に踏み入れたことはないですね。
小さな街でとても落ち着いてていいところよ。
今度、写真撮りに行ってきます! ところで、仕事は基本的にメデジンでされてると思うんですけど、引っ越そうと思ったことはないんですか? 通勤もそれなりに時間かかりますし・・・。
私は仕事をする場所で暮らすのが好きじゃないから、生活するところと仕事をするところをはっきりと分けたいの。だから、これまでメデジンに住みたいと思ったことは一度もないわね。
ちなみに、お一人で住んでらっしゃるんですか?
一応家族で住んでるわね。3階建ての建物に一緒に住んでるだけど、1階は姉が住んでて2階は兄が、3階に私が住んでるの。
なるほど、ご家族も一緒に暮らしてるんだったらなおさら引っ越す必要も無さそうですね。
そうね、コパカバナは住み慣れた街だし家族もいるし、この環境を変えたくないわ。
変わり続けるメデジン
住んでるところはコパカバナですけど、働く場所は昔からメデジンとかだと思うんですよね? メデジンって昔と比べてだいぶ変わりましたか?
そうね、大きく変わったし、今も変わり続けてるわね。たとえばメトロ※とかメトロカブレ※、インテグラル※みたいなインフラの導入は、疑いなく大きな変化をもたらしてるわよね。たとえば、そういう公共交通機関が貧しい地域を通ることで生活環境がよくなってるわ。
※メトロ=メデジン都市圏にある、コロンビアで唯一の都市鉄道。
※メトロカブレ=山の斜面にある貧困地域と都市部を結ぶケーブルカー。
※インテグラル=メトロの駅から出ている巡回バス。駅と周辺部を結んでいる。
都市部と貧しい地域を結ぶメトロカブレとか有名ですよね。メトロカブレを導入した地域で犯罪率が下がったという記事を見ました。
メトロカブレだけじゃなくて、セントロ※の近くにあるParque Berrío(パルケ ベリオ)っていう地域も、メトロが通る何年か前は悲惨な地域だったけど、今は生活の質が改善してるっていうわね。売春宿とか薬物で溢れてたLovaina(ロバイナ)っていう危険な地域も、メトロが通ったことで今は治安も安定しているそうよ。
※メデジンのダウンタウン。商業的中心地で人やモノがたくさん集まる。スリや強盗が多いので、行く時はいつも以上に気を引き締める。
そうなんですね。Parque Berrío(パルケ ベリオ)はまだ泥棒とか多いって聞きますけど、改善してるんですね。あと、最近は自転車専用道※もあちこちにつくられはじめてますね。
※自転車専用道路はCiclorruta(シクロルータ)と呼ばれており、メデジン市内では約20kmのコースが整備されており、現在拡張工事が続いている。
そうね、とてもいいことだと思うわ。今メデジンは車がとっても多いから通勤時間帯とかお昼時ってとても渋滞してて、ちょっと市内を移動するだけで2時間かかることもあるじゃない? だから、そういう渋滞を少しでも解消するために、自転車を使う人を増やす試みは必要だと思うわ。
そうですね、渋滞しているときは本当にイライラしますね。主要な道路が渋滞しててなかなか目的地に着かないですからね・・・。Pico y placa(ピコ イ プラーカ)※の時間帯でも基本的に車は多いし。最近、自宅の近所に自転車専用道路ができたので、近い距離の移動は自転車でするようにしてます。
※Pico y placa(ピコ イ プラーカ)とは、朝(7:00~8:30)と夕方(17:30~19:00)の通勤時間帯に行われる交通規制である。この規制は、渋滞や排ガスによる環境汚染の緩和のために実施され、規制の対象となる車は、曜日ごとに定められたナンバープレートの末尾の数字で決まる。たとえば、月曜日は末尾が2・3・4・5の車両は朝夕の通勤時間帯に使うことはできない。火曜日は6・7・8・9、水曜日は0・1・2・3…、というように運用される。もし、この規制を無視して該当の時間帯に該当の車両を使用すると、道路に設置されたカメラがそうした違反車両を発見して、後日その車両の持ち主の自宅に違反金納付命令が届けられる。なお、この規制は全ての道路ではなく、交通量が多い主要道路に対して実施される。また、電気自動車や天然ガスで走る車両は、この規制から免除されいつでもどこでも走ることができる。
渋滞を解消するため以外にも、環境のことを考えたら自転車を使う人が増えることはいいことよね。
結婚とは違う幸せの形
失礼ですけど、ご結婚されてたりパートナーがいらっしゃったりしますでしょうか?
私は結婚の敵なの(笑)。つまり、結婚っていう制度が好きではないから結婚はしてないけど、パートナーはいるわ。もう付き合って14年になるわね。平日は別々だけど、週末は自宅で一緒に過ごすわ。
じゃあ事実婚っていう形になるんですかね。
そうね、結婚っていう制度が馴染めないし、パートナーと24時間ずっと一緒にいるっていう共同生活が私にはできないしね。だから事実婚っていう形で付き合ってるわね。
たしかに、正直ずっと同じ空間で一緒にいると窮屈に感じることはありますね・・・。ちなみにコロンビアで事実婚のカップルの場合、二人の資産とかはどういう扱いになるんでしょうか?
結婚してる夫婦と変わらないわ。例えば今住んでる部屋はもちろん二人のものだし。ただ、違うのは結婚するときに指輪を交わしたり神父の前で誓ったりそういうことはしないって感じね。
なるほど。私はMatrimonio civil(マトリモニオ シビル)※で結婚したので、指輪を交換して神父ではなく公証人に永遠の愛を誓いました(笑)。
※Matrimonio civil(マトリモニオ シビル)は民事婚のことで、公証人役場で結婚する方法。コロンビアでは、ほかにMatrimonio religioso(マトリモニオ レリ匕オソ)というものがあるが、こちらは宗教婚を意味し、教会で結婚する方法である。
もちろんあなたとあなたの奥さんみたいに結婚を選ぶカップルを否定はしないわ。愛し合っていて夫婦になりたいと願って結婚するのは美しいことよ。ただ、私には結婚っていうものと肌が合わないだけで。
カップルのあり方をカップル自身が決めることができるというのが大事ですね。今回はこの辺にして、次回は、先生にもう少しプライベートなことをお伺いしたいと思います。