前回、『ダジャレーヌちゃん 世界のたび』のプロモーションから、このWEBサイトができた理由、ネット販売に乗り出す経緯を聞きました。果たして、303 BOOKSはどこに向かうのでしょうか? 303 BOOKS代表の常松 心平に聞きました。
「303 BOOKS」はじめました!
なぜ今出版しちゃうのか?
編集プロダクション 株式会社オフィス303の代表取締役 兼 303 BOOKSのプロジェクトリーダー。千葉県千葉市の埋めたて地出身。バイク雑誌、パズル雑誌を経て、児童書の編集者になる。本は読むものではなく、つくるものだと思っている。
リリース予定の本が6冊!?
そして、303 BOOKSは、これからどういう方向に向かうんですか?
とりあえず、リリースする予定の本が6冊あるよ。長田真作さんの本2冊と、アレッサンドロ・ビオレッティさんの本、あとは過去にうちが作った絵本をを303 BOOKSで再発する。あともう1つは野球に関する本。今はまだ情報解禁できないけど。あとは『ダジャレーヌちゃん 世界のたび』の続編だね。
とりあえず、出す予定は結構あるんですね。
とりあえず、本作るのは好きだし、得意だし、やりたいことはたくさんあるから、そこは苦労しないと思う。販売の形態はいろいろ考えているけど、まだ言えない。
ずっと本をつくっていくんですか?
そうだね。そこは、ぶれない方がいいと思った。今の時代、出版やるのに必要なのは、どうしてもやりたいという「強い意志」なんだ。だって、もっと楽に稼げる商売いっぱいあるのに、なんでこのオフィスにみんないるの?って考えたら、「本をつくりたいから」なんだもん。だから、僕も逃げるわけにはいかないと思った。
それは絵本ですか?
情報ではなく、「所有する喜び」がある本がつくりたいんだ。瞬発力より求心力というか。とにかく、そこを突き詰めていきたいんだよ。作家にも、うちの編集者にもそういう姿勢を求めたい。それが今のところは、だいたい「絵本」という形になっている。
編集プロダクションとの棲み分けはどうするんですか?
もちろん、依頼してくれる会社があれば、これからもずっと編集プロダクション「オフィス303」は続いていくよ。一般企業や役所など出版社以外の仕事の比率がどんどん高まっていることもあって、ありがたいことに依頼自体は年々増えている。そこはビジネス上の基盤だしね。でも、303 BOOKSで「本当にやりたかった本をつくる」という部分は、拡大していきたい。
リスクはないんですか?
ほっといたって出版というかつての大型客船は、タイタニックみたいに、沈んでいっているんだもん。303 BOOKSなんて、小さいボードだけど先に向かって漕ぎ出さないと。なにもしないのが最大のリスクだと思う。
本の未来 未来の本!?
出版にまだ可能性はあるんですね?
映画で言うと、リュミエール兄弟の世界初の有料映画公開からもう100年以上経っているじゃん。でも、今でも映画館にたくさんの人が足を運んでいる。音楽もレコード、CD、配信としてメディアは変わってきているけど、どちらも本質的なものは何も変わっていない。
たしかに、おどろくほど、娯楽としての本質は変わっていないですね。
本も同じじゃないかな。たしかに本のなかでも、情報を得るだけのものはだめになっちゃうけど、絵本みたいに、1ページ1ページめくりながら視覚と触覚と想像力で楽しむものは、娯楽として廃れようがない、普遍的な行為だと思うんだよね。
タブレットが今の何倍も進化して、電子書籍が中心になったとしてもですね。
それはそれで楽しみじゃん。もちろん可能な限り紙でリリースしていくつもりだけど、「本」っていう「音楽」や「映画」と同じような意味でのジャンルは残ると思ってる。ただ、作り手はめちゃくちゃ淘汰されるよね。だから、永久にリングに立ち続けなければいけない。逆に立ち続けていれば勝ちだから。WWEで言えば、ロイヤルランブル※だよね。
※ロイヤルランブル:アメリカのプロレス団体WWEにおけるバトルロイヤル戦のこと。30人が同時に戦い、たったひとりの勝者が決まる。2018年は「イヤァオ!」で知られる中邑真輔が優勝した。
最後に、MESSAGEのページに「本の未来 未来の本」って、言葉がありますね。あれどういう意味なんですかな?
本って結局、未来に向かってしか製造されないわけじゃん。目の前の人にしゃべって終わりじゃなくて、形に残すって行為なんだから。印刷機を発明したグーテンベルクだってさ、未来に向けてメッセージを伝えていきたかったわけよ。それは変わらないよね。だから、僕たちみたいに子ども向けに本つくっていると、この人たちの未来にいい影響を与えるものをつくっていきたいと願うんだよ。この人たちが、大人になっても思い出すそんな本をつくりたいって思うんだ。だから少なくとも僕たちがつくる本は全部未来に向けての本「未来の本」だと思ってる。
なるほど。じゃあ「本の未来」はどういうものですか?
「本の未来」は、本当は今絶賛考え中だけど(笑)。
まずは、つくりたいものだけをつくる出版社と、売りたいものを売る書店ばかりになれば、本の未来は変わると思ってる。本当におもしろいもの、お金を払いたくなるものだけでいい。いらないものを大量に製造して、マーケットを埋め尽くすのをやめないと。原点に帰った者に未来はあると思うし、僕たちは本をつくりたいという初期衝動を取り戻すしかないと思うんだよね。読者はページをめくりたいという衝動を抱えて、今も待っていてくれてるんだから。
なんとなく勢いでごまかされたような気もしますが(笑)。
次回は、303 BOOKSの働き方改革(!?)についてお送りする予定です。