前回『ダジャレーヌちゃん 世界のたび』ができるまでの経緯を聞きました。ここからは販売やプロモーションについて303 BOOKS代表の常松心平に聞きました。
「303 BOOKS」はじめました!
なぜ今出版しちゃうのか?
編集プロダクション 株式会社オフィス303の代表取締役 兼 303 BOOKSのプロジェクトリーダー。千葉県千葉市の埋めたて地出身。バイク雑誌、パズル雑誌を経て、児童書の編集者になる。本は読むものではなく、つくるものだと思っている。
ねじめ正一さんと対談!?
それで、ようやく一冊できましたと。さて発売するって段階になって、そこからどう売っていこうという、というビジョンはあったんですか?
そこだよね。僕たち編集プロダクションって普段はデータをつくって印刷所に送信すれば終わりなわけよ。だから営業部も、広報部も、販売部もないわけ。
ですよね。それは、どう見てもないですよね。
だから、とにかく普通には戦いようがないんだから、WEBで多くの人に知ってもらう、これしかないなと思った。出版の世界にいても、システム開発をやってきたからさ。WEBの力はよく知っているじゃん。
20年前からWEBの仕事も並行してやってきましたからね。それで、まずどうしたんですか?
絵本ナビにお願いして、ねじめ正一先生と作者の林木林さんの対談の記事を掲載してもらったんだ。
絵本ナビは、かなり影響力ありますよね。
ある。絵本が好きな人はみんな見てるし、小さい子がいる人は絵本を選ぶときの参考にしているよ。
ねじめ先生、よく出てくださいましたね。
林木林さんって、かつての詩のボクシング※のチャンピオンなんだよ。そんなこともあって、偉大な詩人であり、詩のボクシングの初代チャンピオンであり、だじゃれの大家でもある、ねじめ先生を尊敬している。それに、ねじめ先生も林木林さんずっと気にかけてらっしゃったんだ。そんな関係なんだよ。それで、ねじめ先生にお願いしたんだけど、引き受けてくださったときは感動したね〜。ねじめ先生は、気さくて、ユーモアにあふれていて、ファッションもめっちゃおしゃれで、本当にカッコ良かった。いい意味でイメージとちがった(笑)
※詩のボクシング=ふたりの詩人がリングに見立てたステージで交互に詩を朗読し、戦うもの。1997年に始まり、ねじめ正一さんが初代チャンピオン、2代目が谷川俊太郎さん。林木林さんは第4回チャンピオン。
303 BOOKSは空中戦!?
それであの対談が実現したと。次の一手はどうしたんですか?
うちで学生時代バイトしていた大村在裕君がNONAME Produceという会社に勤めていて、力を借りたんだよ。同じくうちでバイトしていた吉澤まりえさんの結婚式でバッタリ会って。これは運命だ!と思ってね。
そうでしたね。どんな風に相談したんですか?
恥ずかしながら、そもそも、WEBでのプロモーションってどうやるの? ってところから相談した。手はじめに、『ダジャレーヌちゃん世界のたび』のランディングページをつくってもらったんだ。
広告などのリンクをたどって、ユーザーが最初に見るページですね。しかし、制作のスピードがめちゃくちゃ早かったですね。
めっちゃ速かった。もし自分たちでやっていたら、カンどころを外していただろうし、あのスピード感では、つくれなかったと思う。デザインも機能も過不足もなくて、すごくこなれていると思った。
それからTwitterですよね。
そうそう。僕たちレベルだと費用対効果を考えるとTwitter一択になっちゃうんだよね。在裕君に指導してもらって、Twitterで、フォロー&リツイートのキャンペーンやったんだよね。Twitter広告ガンガン回しながら。あっという間に1万フォロワー行った。やっぱり餅は餅屋じゃないけど、あらためてプロってすごいと思った。オーガニックツイートって身体にいいんでしょ?ってぐらいのレベルだったからさ(笑)。
広告じゃないツイートのことですね(笑)もともと500人しかフォロワーいなかったですしね。それから、読書感想文キャンペーンやりましたね。
それは、僕たちの企画だったね。やっぱりフォロワー増えても読んでもらわなきゃ意味ないし。写真アップしてくれたり、DM送ってくれたりして、反響があるとうれしいよね。
このプロモーションに関しては僕のブログにも詳しくまとめていきますので、これくらいにしてください(笑)。それで、これからもWEBを中心にプロモーションしていくんですか?
とりあえずはそうだと思う。書店さんと密接な関係を築いていく「地上戦」の機会があれば別だけど、とりあえずはWEBでの「空中戦」になると思う。地上戦の方がはるかに難しいのよ。それこそ人脈もノウハウないし。この記事を読んだ方で、かわいそうな僕たちに力を貸してくれる方いませんか?
ストレートすぎる叫び(笑) とりあえず今後もTwitter中心ですか?
Twitterはメディアとしては、拡声器みたいなものだと思う。かつては雑誌やテレビが、情報拡散するメディアだったけど、今は拡声器としては、Twitterが使いやすいし、運用コストもめちゃくちゃ安い。でも、それだけだとダメだなとも思った。
たれ流しの情報にすぎなくなってしまうってことですか?
それだよね。WEBのもうひとつの特徴として、雑誌とか新聞とちがって、半永久的にコンテンツを掲示できるということだと思う。つまり、この303 BOOKSのサイトには、僕たちがつくった本に関連するコンテンツと、僕たちがつくる本の元になりうる新たなコンテンツをつくって掲示していこうと思う。たれ流しじゃないもの、読む価値があるものをつくって半永久的に掲示していきたい。それを今度はTwitterでバンバン拡散していくということを考えている。
確かに、ちゃんとしたものをつくればコンテンツは武器になるし、なによりも財産になりますね。
本が大好きで、いつもたくさん買ってくれる人は、気にならないかもしれないけど、すでに1冊500円でも「高っ!」って思う人が多いはずなんだ。
確かに。今はなんでも無料、もしくは破格に安い定額制ですもんね。
YouTubeも、Netflixも、Spotifyも、LINEマンガもない世界には、僕たちはもう戻れないからさ。どれも最高におもしろいでしょ。だから、やっぱり1冊の本を買うにしても、たくさん関連するコンテンツをつくる必要がある。そこで集まってきた興味の結晶が1冊の本って形になっていけば、「買うしかない!」って思ってもらえるじゃないかと。作家のことも、もっとよく知ってもらいたいし、デザインのことも、印刷のことも。僕たち自身のことも知ってもらいたい。
303 BOOKSのサイトで直販する!?
303 BOOKSのサイトでも直販していくんですよね。
やっぱり、結局そこも自分たちでやらなきゃダメだなと思った。絵本って、作家は1年も2年もかけてつくるんだよね。だから、やれることはなんでもやりたいと思ってる。ちょっとプロモーションすると、ネット書店はすぐに欠品しちゃう。これキツイよね。発売直後の大事な時期に。僕たちが認められてないだけかもしれないけどさ。
たしかに、Twitterでがんばってプロモーションしてても、ネット書店は欠品してばかりで、購買機会の喪失がかなりあると思いましたね。リアル書店もどこに売っているか僕たちは把握できないし、もしわかっても、行ったらないかもしれないから公表することはできないんですよね。
僕たちは、リアル書店でも、ネット書店でもアウトサイダーだからさ。結局自分たちで販売もやってみるしかないかなと思ったよ。まだ、言えないことも多いけど、そこにどれだけアイデア投入できるかだよね。
そして、303 BOOKSは、これからどういう方向に向かうんですか?
それはね・・・