303 BOOKSとは、何なのか? いったい何をやりたいのか? なぜ今「本」なのか? そこを303 BOOKS代表・常松心平に、安部が聞きました。
編集プロダクション 株式会社オフィス303の代表取締役 兼 303 BOOKSのプロジェクトリーダー。千葉県千葉市の埋めたて地出身。バイク雑誌、パズル雑誌を経て、児童書の編集者になる。本は読むものではなく、つくるものだと思っている。
編集プロダクションが出版!?
そもそも、303 BOOKSって何で今はじめたんですか? っていうのをこのサイトにまとめたいんですよね。話を聞かせてください。
はじめから説明すると、平成元年に創業されたオフィス303という会社があって、そこで僕たちは編集プロダクションとして、出版社から依頼を受けて本をつくる仕事をやっていたわけ。2019年でちょうど30周年。
出版物の制作会社ですよね。
そうそう。出版界では、小説、絵本、マンガ等の作家もの以外の、編纂物といわれるものを編集プロダクションが制作する形は、実にポピュラーだよ。
たとえばどんな本ですか?
僕たちで言えば、図鑑などの児童書、小中学校の図書館に設置されて学習に使う本、幼児や高齢者の脳トレドリルなんかだよ。どれも作家がいなくて、編集者主導でつくるもの。ちなみに「編プロ」って言い方は、あまり好きじゃない。カール・ゴッチ※の弟子たちが「プロレスじゃなくてプロフェッショナルレスリングだ!」って言ってたのと同じ理由で。
※カール・ゴッチ=ベルギー出身のプロレスラーで、ショーアップされたプロレスを嫌い、キャッチ・アズ・キャッチ・キャンを源流とする関節技や絞め技を、アントニオ猪木、藤原喜明、佐山サトル、前田日明ら弟子たちに伝えた。
ちょっと何言ってるかわかりませんが(笑)。とにかくそれで、ずっとやってきたと。ビジネス的には、今も全然やっていけているわけじゃないですか。
一応ね。おかげさまで、やりたい企画があれば、アイデアを聞いてくれる出版社もたくさんあるし、やりがいのある仕事を依頼してくれる出版社もたくさんあるよ。
WEBとか、映像の仕事もしていますよね。スマートフォン向けのパズルアプリもつくりましたよね。
出版以外の仕事もたくさんチャンスもらって、色々とつくってきた。WEBでは、アプリもリリースしたり、保育業界向けに自分たちのサービスをリリースしたりもした。
それで、満足はできなかった?
出版物に関して言えば満足っちゃ満足だったけど、単純に同じことをずっと続けると僕も社員もモチベーションが落ちてくるから。組織として新しいステップを常に探しているんだよね。
これは出版不況なのか、歴史的役割の終焉なのか!?
それでも、今なぜあえて自社で出版するの? という気もしますが。
書店はどんどん減っていくし、出版社だって潰れていってる。取次だって大変な状況だよ。出版不況っていうけど、不況じゃなくて、歴史的役割が終わりつつあるんじゃないの? って言われてもしかたない状況だね。
コンテンツ産業というのは、消費者の時間の奪い合いですからね。出版、新聞、テレビ、ラジオ、旧来のメディアはWEBに食われて、すべて厳しくなってきますよね。
まったくそのとおり。不可逆的にそうだと思う。でも、出版のシェアがすべて無くなるわけでもないと思うんだ。ただ、出版という島が打ち寄せる波で削られてどんどん小さくなっていくとは思うけど、最後に残る会社はあると思う。
オフィス303は残るということですね。
そのつもりでやらなきゃいけないし。その自信もある。企画力も、技術も高いと思っている。
確かに、この状況で、2018年度が創業以来最高の売上だったですね。
実はそうなんだよね。編集プロダクションにはメリットがあるんだ。それは身軽なところ。営業マンもいないし、倉庫も在庫ももたなくていい、設備投資もない。必要なのは編集者とMacだけ。だから、そのとき一番勢いのある出版社と組んでいればいい、とも考えられる。
出版社は小さくてもメーカーで、編集プロダクションは制作だけですからね。
そうそう。編集プロダクションは流れ者の用心棒みたいなもんで(笑)。出版社から頼まれたら、合戦だけやる感じ。出版社は小さくてもちゃんとサムライがいて、つねに城を守っているわけよ。
聞いていると、わざわざ自社で出版事業やるメリットは全然感じませんけど。
303 BOOKSを立ち上げる経緯はどのようなものだったんでしょう。
最初はね・・・