絵本の世界ぶらり旅#4

『おおきなカエル ティダリク』の世界!オーストラリア先住民のドリームタイムとは?

この記事は約8分で読めます by 蓑輪綾香

こんにちは! 編集アシスタントのみのわです。

絵本の世界ぶらり旅、第四回目です!
絵本を通して、世界の文化や思想をゆるく紹介しましょうというこちらのコーナー。
前回のタンザニアに引き続き、本日も素敵な旅へご案内致します。
どうぞよろしくお願い致します!

しかし、このぶらり旅、行先と順路を事前によく決めずに、それこそぶらりと旅に出てしまいました。

なので、段々少なくなってきた所持金と、少し汚れが目立つようになってきた靴ひもを横目に、これからどうしようか…と、これまでの旅路を振り返ってちょっと立ち止まっているような気分です。

ちなみに、靴ひもが汚れてしまっているのは、前回のタンザニアでアフリカ大陸へ上陸したとき、ちょっと足を伸ばしてサハラ砂漠にも行ったからです。

熱風が吹いていました~。(ジブリオタクのいらん詳細設定)

※ジブリという名前はサハラ砂漠に吹く熱風という意味から来ています。

なんですが、それでも船は荒波を乗り超えて進んでいくわけで、(船旅だったのだ)今回はなんと、オーストラリアに到着いたしました!(笑)

なにやら動物たちの鳴き声が聞こえてきて、とっても面白そうです。

ということで、本日もぜひ、ぶらり旅にお付き合いいただければ幸いです。

それでは、絵本の世界ぶらり旅、出発進行~

(前置きが長くてすみません。)


本日の旅先絵本はこちらです!

「おおきなカエル ティダリク」
作・絵 加藤チャコ 福音館書店

加藤チャコさんは、宮城県仙台市出身の絵本作家さんです。メルボルン大学芸術学部修士課程修了後、様々な経歴を経て、現在はメルボルンにて現代美術家、絵本作家としてご活躍されています。

一匹の大きなカエルと、その隣にカラフルな鳥が描かれていて、彼らの表情がなんだか怪しい雰囲気ですよね…。

さんさんと照っている太陽と果てしない平原からも、オーストラリアのからっとした暑い空気が感じられます。

こちらの絵本、いったいどんなお話なのかといいますと…

むかしむかし、大平原に一匹の大きなカエル、ティダリクが住んでいました。平原では長い間雨が降っていなかったので、水は大変貴重なものでした。

そんな中、ある朝喉がからからで目が覚めたティダリクは、平原にある水という水をすべて飲み込んでしまいます!!

びっくり仰天、ほかのどうぶつたちは、自分たちにも水を分けてほしいと頼みますが、いやだと断られてしまいます。

そこでみんなが考えた解決方法は、ティダリクを笑わせて水を吐き出させよう! というもの。

動物たちによる一発芸大会が始まります! みんな一生懸命一発芸を行いますが、ティダリクはなかなか笑いません。

そんな時、かんかんに怒ったウナギのノンヤンがやってきて…!?

というお話です! なんだか、この時点で既におもしろいですよね。(笑)

飲み込まれてしまっても諦めず、吐き出させよう! というところに、水を大事にしている文化が現れているような気がします。

そして、絵本のティダリクは全然笑いませんが、動物たちの一発芸はどれもおもしろいです。(笑)

「~じゃ」や、「~でねえかの?」といった民話風の語り口も、読み手の笑いを誘います。

このお話は、副題にもあるように、オーストラリアのアボリジニ・ガナイ族の民話がもとになっています。近年、このアボリジニという呼び方は差別的な響きがあるとされているため、代わりにアボリジナルオーストラリア先住民というふうに呼ばれているそうですね。

ということで、本日はこの、オーストラリアのアボリジナルについてご紹介したいと思います!!

アボリジナルは、オーストラリアの先住民族です。ヨーロッパ人がやってくるよりはるかに昔からオーストラリアに住んでいました。

近年の研究では、4, 5万年から12万年前にはすでにオーストラリア大陸で暮らしていたのではないかと言われています。

現存する民族の中では、地球で最も古い文化を持つと言われているんですね!

彼らは、18世紀後半以降、ヨーロッパ人の植民地化に始まり200年もの間様々な迫害を受けていた悲しい歴史がありました。

しかし、現在はオーストラリア政府が先頭に立ち、彼らの権利や文化の保護活動を積極的に行っています。

オーストラリアのお土産屋さんや空港などでは、アボリジナルが描いたアボリジナルアートが売られていたり、ショッピング街で伝統楽器を使ったアボリジナルの路上演奏があったりするそうです。

また、オーストラリア大陸は極度の乾燥地帯で、絵本のようになかなか雨が降らなかったり、気候の変動も不安定だったりと、非常に苛酷な環境が広がっていました。

大陸には農業に適した植物や、家畜に適した動物もいなかったため、人々は動物を狩り、木の実や果物、虫などを集めながら、狩猟民族として生活を営んでいました。日々移動しながら狩りをする生活だったので、街や村をつくって定住するということはなかったと言われています。

彼らは、大自然の中で暮らし、限りある資源を大事にしながら生きていたんですね。

絵本の中にも、オーストラリア特有の様々な動物や自然の描写があります。ユーカリの樹、コアラ、ウォンバット、エミュー、エリマキトカゲ、ハリモグラなどなど…! どれも、日本ではあまり見ない生き物です。

こうした苛酷な環境下で自然と共存しながら生きてきたという歴史もあり、彼らは独自の言語や文化、宗教的信仰などを持っていました。では、アボリジナルは具体的にどのような文化や信仰を持っているのでしょうか。

ここでは主に、その大きな特徴である「ドリームタイム」についてご紹介したいと思います!!

これは、アボリジナルの神話に登場する宗教的な考え方で、現在も多くのアボリジナルはこの考え方を持っていると言われています。それぞれの部族がこの「ドリームタイム」にあたる意味の言葉や信仰を持っていて、私たちの言葉だけでは表現しきれない、非常に抽象的な概念なのだそうです。

そのためここでは、大雑把に、さわりだけ、ちょっとご紹介したいと思います。生暖かい、優しい目で読んでくださいね…!(切実)

さて、アボリジナルの人々は、古来より天地創造の物語を、世代を超えて伝承してきました。その伝承によると、世界は昔、泥や粘土のようなものが広がった何もない所であったと言われています。

そこへ、世界の創造主が現れ、山や川、洞窟などの地形から、地球に存在する様々な生き物まで、あらゆるものを生み出しました。私たち人間にも言葉や知識、儀式や信仰を授けてくれたと考えられています。

そしてこの、世界が創造された時代のことを、人々は「ドリームタイム」と呼んでいました。

ドリームタイムの物語として、具体的には、あらゆる生命の起源や流れなど歴史的なものから、祖先が持っていた知恵や哲学など精神的なもの、狩猟の領域など実際の生活で役に立つことまで、様々な物語があるそうです。

彼らは文字を持たない民族であったので、こうした物語は口伝、または壁画や音楽、踊りなどを通して伝えられてきました。

ここまでは、他の国にある神話や民話などともちょっと似ていますよね。

ですが、このドリームタイムの物語が他の国のお話と大きく異なる点は、その名前の通り、世界創造のお話が「ドリーム(夢)」であることです!!!

世界の創造は、過去→現在→未来という西洋的な時間の流れの中で行われたものなのではなく、創造主たちの夢見たものが現実に存在している、と考えられているのです!!

つまり、私たちは今も創造主たちが夢見た世界を生きている、ということなんですね…!!!

この考え方から、アボリジナルの人々は私たちとは少し違った時間の捉え方をしているそうで、自分の年齢を知らない方もたくさんいらっしゃるそうです。

また、彼ら一人一人に、自分をこの世界に生み出した祖先がいると考えられていました。この祖先は、「ドリーミング(夢見る人)」と呼ばれ、人に限らずヘビやカメなどの生き物であったり、ヤムイモのような植物であったり様々なのだそうです。

こうした信仰から、大地や自然、動物や虫たちなどすべての生き物は繋がっていて、人間もその中の一部であると考えられています。

そのため、人々は大地や自然に敬意を持って接しているのですね。

ちなみに、オーストラリアの世界遺産で、長い間観光地として人気の場所であった「ウルル(エアーズロック)」があります。こちらは、2019年に観光客の登頂を禁止したことが最近では記憶に新しいですよね。

一度は昇ってみたかった…!!という方もいらっしゃるかもしれませんが、長年、現地のアボリジナルのアナング族は神聖な場所であるウルルへの登頂をやめてほしいと主張していたそうです。

アボリジナルの文化を尊重し、これからも守っていくためには必要な決断だったのではないでしょうか…! アボリジナルの人々が持つ文化や信仰は、私たちが今忘れかけてしまっている自然への敬意を思い出させてくれますよね。

さて、今回の旅もそろそろ終わりが近づいてきました。

個人的な好奇心から色々調べてご紹介させていただきましたが、いかがだったでしょうか?? アボリジナルやドリームタイムについて、少しでも興味を持っていただけたなら、幸いです!

また、最後になりますが、この絵本はアボリジナルの考え方やオーストラリアについて学べるだけではなく、笑うことっていいな!とも思える素敵なお話です。

この機会にぜひ、親子で一緒に絵本を読んで、大笑いしてみてはいかがでしょうか!!

では、本日の絵本の世界ぶらり旅はここまでです。

またぜひ一緒に、素敵な旅へ出かけましょう~!

参考文献

・ ナショナルジオグラフィック2013年6月号「祖先の道をたどるアボリジニ」
・ 中川隆「アボリジニの概念〈ドリームタイム〉と深層心理学」
・ オーストラリア政府観光局 先住民アボリジニのオーストラリア

CREDIT

クレジット

執筆・編集
千葉県出身。ジブリとスピッツが好き。最近はThe Songbardsさんも好き。 猫背と蚊の鳴くような声が特徴で、いつも声を張ろうと頑張っている。 帰省先の房総の森で笛(フルート)の練習をするのが密かな趣味。
    イラスト
    1994年、福岡県生まれ。漫画家、イラストレーター。第71回ちばてつや賞にて『死に神』が入選。漫画雑誌『すいかとかのたね』の作家メンバー。散歩と自転車がちょっと好きで、東京から福岡まで歩いたことがある。江戸の消防と建築を研究中。