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ジェイク・ギレン映画

この記事は約8分で読めます by 常松心平

心平です!(おすぎです!のバイブス) 今日は、ひとりの俳優に注目してみたいと思います。それは、口に出して言いたい役者「ジェイク・ギレンホール」です。スウェーデン系のアメリカ人で、両親とも映画人というサラブレット。

見た目的には、阿部寛とココリコ田中直樹をまぜたような感じ。大きな目をぎょろぎょろさせて、愛も狂気も醸しまくる〜! そして、どこか天から授かったコメディ成分がにじみ出る、不思議なジェイク・ギレン・バランスで成り立っている。そんなキャラ立ちまくりのジェイク・ギレンホールの作品から6つ紹介します。

ブロークバック・マウンテン

2005年公開
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ジェイク・ギレンホールの出世作にて、歴史的名作。アメリカの中西部、山でキャンプしながら生活をすることになった、ふたりの若きカウボーイ。ヒース・レジャーとジェイク・ギレンホール。

大自然の中で羊を追って暮らすふたりには徐々に友情が芽生え、そしてその関係は恋へと変わっていく。1960年代以降を舞台にしているが、まだまだ男性同士の恋なんて一切理解されない時代。まして保守的なアメリカ中西部、ましてカウボーイの社会。

そんな中、ふたりが傷つきながら互いを思いあった20年愛。ふたりの役者バカが全身全霊で描いた究極の恋愛映画となっている。劇中ふたりはそれぞれ結婚する。ヒース・レジャーの妻をミシェル・ウィリアムズ、ジェイク・ギレンホールの妻をアン・ハサウェイが演じた。後の名優が4人もそろって、今考えるとかなり豪華キャスティング。

実際に若き俳優4人は特別な関係になっていく。ヒース・レジャーとミシェル・ウィリアムズは婚約して子どもを授かった(後に婚約解消)。ヒース・レジャーとジェイク・ギレンホールはその後もずっと親友でありつづけた。

しかし2008年。あの『ダークナイト』を演じた後、ジョーカー役にのめり込み過ぎたヒース・レジャーは命を失ってしまう。ジェイク・ギレンホールはショックのあまり何もコメントを残すことができなかった。その後、ジェイク・ギレンホールは、ヒース・レジャーとミシェル・ウィリアムズとの一人娘マチルダの後見人を務めていることを明かした。

ナイトクローラー

2014年公開
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からっぽな心に身勝手さだけを詰め込んだような男が、ロサンゼルで、ビデオジャーナリストになるというストーリー。警察無線を傍受して、ロサンゼルの闇を切り裂くように車を走らせ、誰よりも先に事件現場に駆けつけ、決定的な映像を撮る。

スクープをゲットできるようになり、「ジェイクギレン砲」を撃ちまくるようになると、徐々に一線を超え、男は狂っていく。ロサンゼルスの夜を舞台に、メタリックでギラギラとした映像、そんなロスの夜景の中に鈍く光るジェイク・ギレンホールのおそろしい目。

世間では、「ジェイク・ギレンホール」というより、「ナイトクローラーのヤバいやつ」と言った方が通じる。そのぐらいインパクトの強い作品だった。

身体のサイズも役に合わせて変えていくジェイクだが、これはかなりしぼって、ひょろひょろ。松田優作の『野獣死すべし』のように、この作品にかけてきてる感がハンパじゃなかった。ちなみに『野獣死すべし』も主人公はジャーナリストだった。

雨の日は会えない、晴れた日は君を想う

2015年公開
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エリート銀行員だった男。ところがある日、交通事故で美しい妻が亡くなってしまう。ところが、涙が出ず、悲しくもない、感情をすべて失ってしまったのだ。

そんな完全に死んだ目をした男をジェイク・ギレンホールが演じる。死んだ目はお手の物。誰よりも死んでいる。それが悲しいけれど、笑える。そして、男は、身の回りの物をぶっ壊し続ける。自らの再生のために。今回のジェイクは隠れマッチョ。ものを壊すときのフィジカルはなかなかの迫力。壊して、壊して壊しまくる。

設定だけみると、ぶっ飛んでいて、ジェイク・ギレンホールを見ていると結構笑えるんだが、ラストは感動。ヒース・レジャーとの別れから、『ナイトクローラー』ですさんでいたジェイクが再生していくプロセスを見ているという、そんな『ブロークバック・マウンテン』史観でとらえると、たまらない(完全に妄想)。

サウスポー

2015年公開
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『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』と同じ年の作品。派手に殴り合うことで人気だったボクシングの世界チャンピオンが、あることがきっかけで妻と別れ、子どもと離れ、すべてを失ってしまう。

しかし、そこから再び立ち上がり、世界チャンピオンを目指す。と、ここだけ読むとよくあるボクシング映画だが、これがジェイク・ギレンホールのハンパない熱演で、ひと味違う作品に。監督は『トレーニング デイ』『イコライザー』のアントワーン・フークア。コイツは信頼できる男。

ジェイク・ギレンホールが演じた男はとにかくキレやすく、そのことで人生が悪い方、悪い方へと行ってしまう。死んだ目に、暴力衝動だけが宿った状態というか。本当に危ないやつ。

そして、今回ジェイク・ギレンホールは身体をバギバギにビルドアップしている。白眉は試合シーン。『ロッキー』シリーズは、『クリード』シリーズもふくめてもちろん大好きだが、試合シーンはあまりリアリティがない。

ところが、この作品のボクシングシーンは、完成度がとんでもない、本当に試合を観ているような圧倒的な迫力と緊迫感。この1点だけで、『ファイター』や『ミリオンダラー・ベイビー』にも負けないボクシング映画の傑作だと言いたい。だってボクシング映画で試合シーンが100点なら、その映画は少なくとも100点以上の作品なのだから。こういう大作ではない、ジャンル映画の傑作こそ、ぜひサブスクで観てほしい。

ラブ&ドラッグ

2010年公開
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ブロークバック・マウンテン』で夫婦だったジェイク・ギレンホールとアン・ハサウェイが転生して出会ったロマンティック・コメディ。ジェイク・ギレンホールは製薬会社ファイザーの営業(MR)。

たまたま営業先の病院で、パーキンソン病を患うアン・ハサウェイと出会って恋におちる。このジェイクはいわゆるヤリ●ンってやつ。モテる。とにかくモテる(うらやましい)。

アン・ハサウェイと出会ってからは、ラブシーンの連続。アン・ハサウェイも惜しみなくヌードになって迫真の演技。この人もほんとに役者バカ。だってこの作品の段階で、『プラダを着た悪魔』や、『レイチェルの結婚』に出演して、完璧にスターになっているわけで。一般的には、これは脱ぐような作品じゃないと思うんだけど。そういうセコいこと言わないのがアン・ハサウェイと、シャーリーズ・セロン

ジョシュ・ギャッド演じるボンクラ弟がおもしろすぎたり、『スーツ』のハーヴィー・スペクター役のガブリエル・マクトがでてきたり、途中でジェイクがバイアグラの担当になったりして、全体的にコメディとしてめっちゃ笑えるんだけど、後半の展開は、キッチリ泣ける。「バカヤローっ!!!」って感じ。

甘くて、エロくて、切なくて。人生には、ロマンティック・コメディさえあればいいと思える作品(極論)。『ブロークバック・マウンテン』の若者たちがちゃんと成功して、活躍しているのは、本当に良かったと。極東の地で勝手に思う。そして、この作品からさらに10年。今やふたりは完全に名優になった。

ボストン ストロング 〜ダメな僕だから英雄になれた〜

2017年公開
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2013年にあったボストンマラソン爆破事件の実話をもとにしている。元カノがボストンマラソンに出るからといって、ゴール付近で応援していたちょっぴり痛いジェイク・ギレンホール。

しかし不運にも爆弾テロにあってしまい、両足を失ってしまう。今回のジェイクは、足が無いという肉体的表現を完璧に演じただけでなく、勝手に英雄視する大衆に対して、どんどん身も心もすり減っていく若者を演じきった。自らプロデューサーも務めた渾身の作品!

いろいろあってついに彼は前向きに生きようとする(ざっくり!)。そして、レッドソックスの始球式に出ることになるのだ。暗い通路を抜けてグラウンドに出るとき、画面はジェイク・ギレンホールの大きな目を捉える。『ナイトクローラー』では見開けば見開くほどその瞳に「虚無」が広がっていたが、この作品では、暗闇の中の瞳に「希望の光」がだんだん宿っていく。

実はこの作品、原題は『Stronger』というの。アメリカは、911以降ずっと戦争してたし、テロも続いて、辛いことがいっぱい起きた。COVID-19では世界で一番多くの方が亡くなり、今は悲しい暴動が広がっている。それでも彼らは、もう一度は立ち上がるため「強くありたい」と願っている。それがアメリカ(想像)。

だから、今この作品を観て、ジェイク・ギレンホールが義足をつけて立ち上がり、一歩ずつ歩き出したとき、思わず慟哭しちゃったね〜正直。

こんな感じで名作連発のジェイク・ギレンホールは仕事ができる男としてモテモテだ。ジェイミー・キングナタリー・ポートマンキルスティン・ダンストリース・ウィザースプーン、歌手のテイラー・スウィフトと交際していた。最近では、16歳年下のモデル、ジャンヌ・カデューと交際しているという。『ボストン ストロング』より『ラブ&ドラッグ』が実情に近い。華やかすぎる。。。

僕としては、ジェイク・ギレンホールには、ぜひ超奥手な男性を演じてほしい。具体的には、阿部寛の『結婚できない男』のインターナショナル版を。自らのスタイルにこだわりすぎて、一見生きづらそうにしか見えないのに、本人はぜんぜん気にしていない感じ。たとえ奇行に見えたとして、それがなにか? みたいな感じ。ジェイク・ギレンホールなら絶対うまくやるんだけどなあ。目をぎょろぎょろさせて。夏川結衣の役は、ミシェル・ウィリアムズでお願いします!

お腹がすいちゃう「飯テロ」映画

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執筆・編集
303 BOOKS(株式会社オフィス303)代表取締役。千葉県千葉市の埋めたて地出身。バイク雑誌、パズル雑誌を経て、児童書の編集者になる。本は読むものではなく、つくるものだと思っている。
イラスト
1994年、福岡県生まれ。漫画家、イラストレーター。第71回ちばてつや賞にて「死に神」が入選。漫画雑誌『すいかとかのたね』の作家メンバー。散歩と自転車がちょっと好きで、東京から福岡まで歩いたことがある。時代劇漫画雑誌『コミック乱』にて「神田ごくら町職人ばなし」を不定期掲載中。