詩人で絵詞作家の内田麟太郎さんは、
日常の何気ないできごとに詩を感じ、
ノートに書きとめるようにFacebookに投稿する──。
思わず笑ってしまう詩、心に優しく染み入る詩、
ふと誰かのことを思い出してしまう詩。
そんな内田麟太郎さんの詩を、
みなさんが一週間を乗り切る力になればと、
毎週月曜日に1編ずつご紹介します。
内田麟太郎さんのFacebook
いのちの
少年よ
顔を上げよ
あの夕焼けの空を見よう
あの日のように鳥が渡っていく
幼いおまえは私の肩車で
「渡り鳥だよ」と自慢そうにいった
それから「カモかなぁ」とも
少年よ泣いている顔を上げよ
あの日のようにふたりでこの道を歩こう
あの木のところから肩車をしよう
本屋で漫画を買おう
ひとは悲しみを生きる
おまえも いま
だが少年よ顔を上げよ
あの日のように鳥に手をふろう
大きく大きく手をふろう
出会ったいのちの幸せを願いながら
詩
うちだりんたろう
内田麟太郎
1941年福岡県生まれ。詩人、絵詞(えことば)作家。『さかさまライオン』で絵本にっぽん賞、『うそつきのつき』で小学館児童出版文化賞、『がたごとがたごと』で日本絵本賞、詩集『ぼくたちはなく』で三越左千夫少年詩賞を受賞。他に絵本「おれたち、ともだち!」シリーズなど著作多数。
イラスト
詩303P 内田麟太郎
作=内田麟太郎
1,650円(税込)