コロナウイルスにどうやって世界が立ち向かっているかを紹介する『VSコロナ ブラジル編』。今回はブラジルに住む日本人の現状、言語の違い、アジア人に対する差別について取り上げます。日本に比べ非常に治安が悪いサンパウロの危機的状況について、吉澤まりえがお伝えします!
(※上の画像はブラジルでの「Stay Home」のCM)
VSコロナ ブラジル編
カーニバルの終わりに
現在海外に住む日本人は
世界中に約139万人
この新型コロナウイルスによる未曾有の危機に
日本へ一時的に避難している人
現地に留まっている人
日本に帰りたいけど帰れない人
様々な日本人がいると思います
海外でこの危機を経験することは
どのようなものか
考えてみたいと思います
私が住むサンパウロ州には約11,000人の日本人が住んでいると言われています。その大半は日系企業に勤める駐在員とその家族です。私たちは「外国人」として生活しています。
私がサンパウロに来て一番驚いたことは、英語が全く通じないということでした。外資系企業で働くビジネスマンを除いて、街中のレストランやスーパーなどでは英語が通じません。公用語はポルトガル語です。
私も渡伯前から1年以上ポルトガル語を勉強していますが、せいぜい初級に毛が生えた程度で、日常会話がやっと成立するといったレベルです。日系企業の駐在員は語学研修を現地で受けていることが多く、ポルトガル語が堪能な方もいますが、必ずしも全員ではありません。
この危機的状況で言語がわからないということは致命的です。
まずはニュース。テレビのニュースを見ても聞き取れる情報がわずかです。頼みの綱はネットニュースで、重要そうなものを翻訳サイトにかけて読むことはできます。しかしながら、もちろんネットのニュースが全て正しいとは限りません。母語ですらフェイクニュースを見分けるのは難しいというのに、どうやって外国語で情報の正否を判断できるでしょうか?
次に病院。万が一新型コロナウイルスに感染した場合、病院で英語は通じません。日本人が多く住む都市ではありがたいことに日系の病院や診療所があり、サンパウロにも日系の病院があるのでお世話になっていますが、既にサンパウロの日系病院はほぼ満床と言われています。
以前私は日系の病院が休みの日に急患で現地の病院を受診したことがありますが、英語が通じたのはたった一人でした。医療通訳もありますが、この状況でお願いするのは現実的ではないでしょう。
また、既に欧米諸国で報告されているようなアジア人差別はブラジルでも発生しています。私自身、ブラジルで感染者が報告される前に近所のスーパーで突然老人から罵倒されたことがありました。もちろん何を言われているかは理解できませんが、アジア人は私一人でしたし、私の顔を見た瞬間憎悪に歪んだあの顔は忘れることができません。
感染拡大後にも近所を歩いていただけで「コロナ!」と言われたり、アルコールを自分にだけ売ってもらえなかったという友人もいました。誤解のないように説明すると、ブラジル人は普段とても親日的です。
前回も書いた通り、サンパウロは非常に治安の悪い都市です。外務省によるとサンパウロ市内の人口10万あたりの強盗発生件数は日本のおよそ1,100倍、そのほとんどで拳銃が使用されています。外出規制によりゾンビタウンと化したサンパウロで街をうろつくのは、ゾンビではなく拳銃を持った人間です。昼間であっても不用意に出歩くことはできません。
このような状況下でサンパウロの日系企業の多くは駐在員の家族の帰国を推奨しています。私の会社(夫と同じ会社で働いていました)でも3月末に帯同家族の帰国許可が発令されました。駐在員自身が帰国しているケースは半数以下といった印象です。
しかし帰国してからの隔離場所や交通機関の問題、その後のウィークリーマンションの確保など、クリアすべき課題は山積みです。私は運良く帰国できる条件が整っていたので帰国しましたが、現地に留まる決断をした友人も少なくありません。私自身、病める時も健やかなる時も支え合うことを誓った(実際には神前式だから誓ってないけど)夫を置いて帰国することには大きな葛藤がありました。
日本に帰国することが必ずしも正解だとは思いません。それでも、少しでも多くの海外に住む日本人が、安心できる場所で過ごせることを切に祈っています。
というわけで、次回はサンパウロから日本に帰国するまでをレポートしたいと思います。