なによりも真っ先に教育を止めた日本。コロナウイルスと戦う上で、子どもの学びの継続は大きなテーマです。コロナウイルスと戦う世界の様子を紹介する『VSコロナ コロンビア編』。今回はロックダウン後の教育現場について取り上げます。日本でも3月に休校措置が取られてから、オンライン授業の準備や給食が無くなった子供たちへの対応などが問題になりました。ロックダウン中のコロンビアで、学生たち、子供を持つ親たちは、この問題にどのように向き合っているのでしょうか。笹島佑介が現地からお伝えします!
VSコロナ コロンビア編
175人でロックダウン
コロナウイルスにより、138ヶ国13億人以上の生徒がスクーリング(登校して実際に授業を受けること)できていないと言われている昨今、日本では、徐々に授業を再開しはじめていますが休校しているところもまだまだ多いと聞きます。
コロンビアでは全ての教育機関がスクーリング授業を中止しています。最初のロックダウン命令が出たときは4月20日までの予定でしたが、ロックダウンが4月27日まで延長されることが決まると、スクーリング授業の中止も5月31日までに延長されました。
そして、ちょうどこの記事を書いているころに、厚生省大臣が「ロックダウンは4月27日には終わらない」と発表したのでおそらく当分再開されないでしょう。それにしてもこの暮らしはいつまで続くんのでしょうか…。
世界の教育現場ではオンライン授業を導入するなど自宅学習に切り替える動きが見られますがコロンビアでも同様で、多くの大学ではすぐにオンラインでの講義に切り替えています。コンピューターやインターネット環境がない生徒のために貸出を行っている大学もあります。
また、コロンビア教育省は、小学校から高校までの生徒たちの自宅学習を支援するために「Aprender Digital(アプレンデール・ディヒタル)」というインターネットサイトをつくりました。ここでは学年別に科学、国語(スペイン語)、数学の講義が1000個以上も提供されていて、それぞれの講義には
- 教師のための指導ガイド
- 学習のねらい
- 練習問題
- 要約
- 課題
などのコンテンツが用意されています。
この「Aprender Digital」、 素晴らしいプラットフォームだと思うのですが根本的な問題があります。教皇ハベリアナ大学によると、コロンビアの公立学校に通う生徒のうち、半分以上が家庭にコンピューターやインターネットがないのです。特に地方はその所持率が低く、都市部では半分以上が持っていますが田舎のほうでは10%を下回ります。
そうした地方ではコンピューターがあってもインターネットを利用するためのお金がない人も多くいるほか、そもそもインターネット回線がひかれていない、電波がないという場所も少なくないので、地方部ではおよそ200万人の生徒がインターネットを活用したリモート学習を受けられない状態にあるといわれています。
しかし、コンピューターやインターネットを利用できない人が自宅で学習するための方法がないわけではありません。テレビやラジオで自宅学習用のプログラムがいくつか用意されていて、教育省と国営放送局が協力して制作しているテレビプログラム「’3, 2, 1 Edu-Acción’(3, 2, 1エドゥアクシオン)」は、月曜から金曜までさまざまな教科のコンテンツを扱っています。
ちなみに、コロンビアのテレビ普及率は92%なので、こうしたテレビ網を使うことでほとんどの家庭をカバーできることになります。
ところで、今回のスクーリングの中止でとくに影響を受けているのが大学に入ろうとする学生です。Icfes(イックフェス)という日本のセンター試験に該当する試験が延期になり、再開の目処がまだたっていません。教育大臣によると、コロナウイルスの感染状況を鑑みて厚生省がOKを出せば試験が受けられるとのことですが、不安になっている学生も多いようです。
また、経済的に苦しい家庭への影響もあります。子どもたちに食べ物を用意するのもたいへんな家庭では学校の給食(日本のものと比べると質素ですが)は貴重です。学校に行けなくなると、昼ごはんを食べられない子どもが出てきてしまいます。そのため、教育省ではスクーリングが中止になった後も300万以上の子どもに給食を提供しています。
スクーリングがなくなり、テレワークをしながら子どもの面倒を見ないといけない保護者もたくさんいるでしょう。私の場合7才になる妻の連れ子がいるのですが、この記事も、膝の上に乗ってきたり、突然後ろから誰か丸わかりの「だーれだ?」をされたり、椅子を引っ張られてデスクから引き離されたりといった無邪気な妨害活動に耐えつつ書かれています。
次回は、ロックダウンと刑務所というテーマでお送りします。