asatte RALLY 2025「あさってさんといっしょ!初めてのイベント!」イベントレポート

小泉今日子さんが立ち上げた会社「株式会社明後日」は、2025年に創立10周年を迎えました。これを記念してスタートしたのが「asatte RALLY」。6月4日から約1か月にわたり、都内のさまざまな会場で10の催しが行われるという、10周年の節目にふさわしい大規模なイベントです。
その3つ目となる「あさってさんといっしょ!初めてのイベント!」が、6月15日(日)に池尻大橋のBPMで開催されました。
「0歳児から参加OK!イベントデビューにぜひ!」と銘打たれたこの催しでは、紙芝居や絵本の読み聞かせが行われ、たくさんの小さなお客さんでにぎわいました。
今回は、303BOOKSから刊行された絵本4冊が朗読されるという貴重な機会にも恵まれました。当日の様子を写真とともにお届けします。

子どもと一緒に行ける場をもっと増やしたくて
会場に入ってまず目に飛び込んでくるのは、前方にどーんと広がる大きなラグ!毛足の長いふわふわの質感で、思わずダイブしたくなるほど。子どもたちが寝転んだり跳ねたり、自由に過ごせるようにという心配りが感じられました。


会場のオープンとともに、小さなお客さんたちが次々に集まります。店内に和やかな雰囲気が満ちたころ、小泉さんはステージへ。

こんにちは。今日はお集まりいただきありがとうございます。どんなふうに声を出してもらっても、泣いちゃっても、歩き回っても全然構わないです。飲み物を飲んだり、お腹が空いたら何か食べたりしても大丈夫。お父さんもお母さんもいつも子育て大変だと思いますけど、今日はリラックスして一緒に楽しんでいただけたらいいなと思います。

明後日の主催で行われる読み聞かせのイベントは、実は今回が2回目。最初は2020年に開催された「asatteFORCE」でした。

絵本の読み聞かせは、やる方もしあわせなんです。子どもたちの声が聞けたり笑顔が見れたりするので。前回は最後にお母さんお父さん方をロビーでお見送りしたんですけど、やっぱりコロナ禍に子どもを育てることはプレッシャーになっていたのか、「すごく嬉しかった」と言って涙を流して帰っていかれる方が多かったんです。
子どもを連れていける場所がとても少ないということにその時気がついて、こういう場づくりをこの先もやっていけたらいいなと思って、今日も読み聞かせの企画を立てました。
「asatte FORCE」で行われた読み聞かせイベント「えほんのろうどく 長田真作さんの本」レポート
いざ、ニシオカ・ト・ニールさんのクセになる紙芝居ワールドへ!
小泉さんの挨拶が終わり、いよいよイベントスタートです。まずは紙芝居から。小泉さんから紹介があり、今回自作の紙芝居の読み聞かせてくれる、脚本家・演出家・俳優のニシオカ・ト・ニールさんが登場しました。

自身が主宰する演劇ユニット「カミナリフラッシュバックス」では、全ての作品で脚本・演出を務めるほか、最近ではドラマや映画、他団体などの脚本も多数手がけるなど、精力的に活動中。

手作りの、オリジナル紙芝居です。どんな紙芝居かというと、「なんともいえない紙芝居」になっています。どうぞごゆるりと御覧ください。
第一作目
「いるよ」
「いっぱいお絵描きしているうちに、お気に入りの色鉛筆がどんどん短くなって、ついに無くなっちゃった!」 (描いた絵)「いるよォ〜」
「そっか。鉛筆は無くなっても、絵は残るもんね。」


クセになりそうな「いるよォ〜」が出る度に、会場からはクスクスと笑い声が上がっていました。
お次はニシオカさんが初めて自ら絵も手掛けた作品
「ポッ 神キャッチ」
主人公のホームランバッター(ダルビッシュ選手似)。彼には打つ球打つ球全てを見事に「神キャッチ!」してしまうポーカーフェイスのライバルがいて…?


後半、思いもよらない形で伏線が回収されたお話の見事さに、感嘆の声をあげる小さなお客さんも!
あっという間に最後のお話。
「じりりた」
毎日毎日ご主人を「じりり」と起こしてきた目覚まし時計。8年たったある日、いつものようにベルを鳴らそうとしたけど、鳴らない!ピンチ! そのとき「ピピピピ」という音が。それはご主人のそばにあったスマートフォンのアラーム音で……。



2023年に行われた明後日HRの公演と同じ「自利利他」をテーマにした作品で、今回のイベントのために新たに作られた、心温まるお話でした。

今度は4つの楽しい絵本の世界へ飛び込もう!

じゃあ、続けて本をキョンちゃんが読みますね。今日は本を4冊選んできました。
そう言って、絵本が映し出された大きなスクリーンの隣に小泉さんが腰を下ろします。
絵本の読み聞かせのはじまり、はじまり。
asatteの読み聞かせでは、語りにあわせて絵本のページがスクリーンに大きく映し出され、テンポよくめくられていくのが特徴です。
◯1冊目
『あのね あのね』(内田麟太郎:文 山﨑おしるこ:絵)
https://303books.official.ec/items/102764972
親切なアリに助けてもらった虫たちだけど、恥ずかしくてなかなか「ありがとう」が言えません。


「もじもじ もじもじ いえないの」小泉さんの声にあわせるように、客席からも「もじもじ!」という元気な声が返ってきました。
◯2冊目
『グラニフのえほん おさんぽスシトレイン』(たいっちゃん:作・絵 はせがわさとみ:文)
https://303books.official.ec/items/91942512
おすしの電車が「ころころ てくてく」、小さな冒険に出発進行ー!



小泉さんの「おすし食べたことある人!」の問いかけに、「はい!」「あります!」「はま寿司大好き!」と一斉に小さな手があがります。お寿司はやっぱり人気です。
◯3冊目
『ぼくはキリン』(さとうたくま:作 カワダクニコ:絵)
https://303books.official.ec/items/102765791
プロバスケットボール・名古屋ダイヤモンドドルフィンズの佐藤卓磨選手と、カワダクニコさんが手がけた物語。「誰にでも自分の強みはある」というメッセージが込められています。



絵本についていた特典の佐藤選手のポストカードに「ちょっとときめきました」と小泉さん。
◯4冊目
『ぷり』(ひろたあきら:作)
https://303books.official.ec/items/94734956
トリを飾るのは、読めば絶対ウケる鉄板絵本。ザッツ・排泄・エンタテインメント!

小泉さんの「これ、なんだ?」の呼びかけに、会場からはすかさず「おしり!」の声。会場のワクワクがビンビン伝わってきます。


実はこの日、作者のひろたあきらさんも会場に来ていました。小泉さんから声がかかり、急遽、ひろたさんが壇上へ!

2019年に刊⾏した絵本『むれ』が多数の絵本賞を受賞。その後も多数の絵本を手掛け、2021年、幸⽥町絵本⼤使に就任。絵本を⽤いたワークショップや読み聞かせ会を積極的に⾏う。

ものすごい数をお描きになりましたね。

いっぱい「うんこ」って言わせてしまってすみません。

そうですね。ギネスに挑戦できそうです。
会場は爆笑に包まれ、その後、衝撃の『ぷり』誕生秘話も語られました。
最後はみんなで「LOVE&PEACE体操」!

最後に体操しよう!元気なちびっこは立ってください!
小泉さんの呼びかけに応えて、子どもたちは一斉に立ち上がり、手を開いたり閉じたり、首を動かしたりして体をほぐします。


腕をぐるっと回して大きなハート、両手を伸ばしてピース!
「ピースの意味、分かる人?みんなで仲良くしあわせに暮らすことです」と小泉さん。
最後には絵本『あのね あのね』のように、みんなで「ありがとう」を伝えあい、イベントはおしまい。
まさにLOVE&PEACEがあふれる催しとなりましたとさ。
イベントを終えて 小泉さん・ニシオカさんインタビュー
ー「asatte RALLY」の中に子ども向けの企画を入れるというのは、最初から構想があったのですか?

はい。これはもう、絶対にラインナップに入れようと決めていました。
2021年に「asatte Force」で行った読み聞かせのときに、ロビーでお母さんたちが感極まっていた光景が、やっぱり私は忘れられないんですよね。
コロナ禍という状況の中で行ける場所もなくて、子どもとだけでずっと過ごしていて疲弊していたんだろうなと強く感じたんです。
今、社員にも子育て中のスタッフが1人いるんですが、彼女もやっぱり「子どもを連れて行ける文化的な場所がない」と言うので、これは絶対に何かやろうと思っていました。それで「具体的に何をしようか?」という話になったとき、制作の関根が「トニールさんが、いま紙芝居をやってるみたいですよ」と教えてくれたので、「それはぜひお願いしたい」と言って決まりました。じゃあ私は絵本を読もうかな、と。
紙芝居、すごく上手でしたね!お話もおもしろかったです。

今日、朝6時から練習してきました!
―ニシオカさんは、どうして紙芝居を始めようと思ったんですか?

松陰神社前に「ゐ(い)」という知り合いがやっているカフェがあって、そこで俳優の飯野雅彦さんが紙芝居をやっているんです。それこそ、コロナ禍で仕事がなくなってしまった時期に、お金のためというより「やっぱり何か自分の表現をしたい」という思いで始められたそうです。それを観に行ったらもう、紙芝居が面白すぎて、「私もちょっと作ってみたい!」って突き動かされました。演劇は時間がかかるけれど、紙芝居なら道具さえ持っていけばすぐにできるし、動画で配信する方法でも、生で見るのと比べてそれほど大きな差なく届けられるんじゃないかと思って描き始めたんです。「ゐ」の店内は10人ほどしか人が入らないので、こんなにたくさんの子どもたちの前でやったのは、今日が初めてでした。
ーやってみてどうでしたか?

始める前は「ウケなかったらどうしよう…」と思ってました。

ウケてたよ!

「神キャッチ!」って言葉を、子どもが好きらしくて。以前も4歳のお子さんがずっと気に入って、言ってましたね。なんでもないときも、他のところを読んでいるときも「神キャッチ!」って(笑)
そういうお子さんがおもしろがるところに新しい発見があって、こちらがすごく影響を受けますね。

音とかも関係するんでしょうね。おもしろいですよね。
ー今の「神キャッチ!」みたいに、何か印象に残っている子どもの反応はありますか?

今日は『あのね あのね』の「もじもじ もじもじ」のところで、一緒に声を合わせてくれる子がいましたね。『おさんぽスシトレイン』は、問いかけが物語の中に自然に入っているから、「ネタ落としちゃったのだあれ?」みたいな場面で、みんながすごく食いついてくる感じがありました。

「はま寿司!」って言ってましたね(笑)

「お寿司すき〜!はま寿司!」ってね。おもしろかった!自由でよかったね。

紙芝居を片付けながら聞いてて「おもしろ!」となりました。
興味があったことをすぐに言葉にしてくれるのがいいですよね。今日も「ダルビッシュ選手に似てるね」とか「そういうことね」とか。大人はなかなか出さない反応が聞けるのは嬉しいです。
ー今回、読み聞かせに選ばれた4冊の絵本のチョイスの理由はなんですか?

まず『ぷり』は絶対子どもは好きだし『おさんぽスシトレイン』も絶対好きだということですぐに決まりました。 『ぼくはキリン』は、お母さんやお父さんも含めて、読むと元気が出るかなと思いましたね。『あのね あのね』も「ありがとう」や「嬉しい」が伝わる絵本で…今日は全部シンプルなテーマのものを結果的には選んだと思います。
―読むときに心がけていることは何かありますか?

私は大人に向けて本や詩を読んだり、番組でナレーションをしたりと、いろんなタイプの朗読をする機会があります。
その時々で求められるものは違うけれど、子どもさんたちに絵本を読むときは「参加してもらう」ということを心がけてますね。
それがいちばん飽きずに見てもらえるし、ずっと覚えているだろうなと思うから。だから子どもたちに質問したり、「手をあげて」って呼びかけたりします。
そういえば今日、会場に敷かれていた大きなラグが本当に気持ちよくて。みんな寝っ転がったり、ママにぐた〜って寄りかかったりしていて、おうちにいるみたいな感覚で楽しんでもらえたのは、すごくよかったですね。
ー子どものために作られた場ではあるけど、大人にも開かれている感じがしました。

お父さんもお母さんも、本当にいつも大変だと思うんですね、子どもを育てるって。身体のことも心のことも、ある一定の緊張感の中で育てていると思うんです。
心や身体の成長がゆっくりのお子さんもいるじゃないですか、そうしたお子さんの場合は一緒に行ける場所が特に限られているのかなと感じます。だから、今日のような子どもと一緒に参加できるイベントを、もっともっと定期的に、頻繁にできたらいいと思っています。
演劇と違って、朗読や紙芝居は、本を持ってひとりで行けばできるから。

そうですね。身軽なコンテンツを持っているっているのはやっぱりいいですよ。

ね。どんどん仲間を増やしてみんなでやれたらいいですよね。
ー303BOOKSも仲間の一員として、これからもぜひ参加させてください!本日はありがとうございました。







