低酸素トレーナー 安藤真由子

キリマンジャロ登頂へ

この記事は約7分で読めます by 一柳麻衣子

安藤真由子さんのインタビューの最終回は、いよいよキリマンジャロに挑戦についてです。低酸素室で多くの利用者を指導してきた安藤さんですが、自身が登った山は富士山まで。心のどこかで高所登山を体験する必要を感じていたそうです。そんな思いを実現させ、キリマンジャロに行くことを決意した安藤さんが、家族に相談して、背中を押してもらってから出発までのドタバタ劇や、登頂したときの気持ちなどなど包み隠さず語っていただきました。
(取材当日は、5月14日で緊急事態宣言の最中でした。ZOOMを使ってインタビューを行いました)

安藤真由子(あんどうまゆこ)
鹿屋大学大学院卒。体育学博士、健康運動指導士。2005年からミウラ・ドルフィンズ所属。高所登山者向けの低酸素シニアトレーナー。2003年ロードレース元日本代表選手。2015年にキリマンジャロに初登頂。その後、2019年には「安藤真由子と登ろうキリマンジャロ登山」を旅行会社が企画。2020年にも登頂。登山前トレーニングから登山者をサポートしながら、キリマンジャロに登頂する。家族での登山も数多く経験し、親子登山の楽しみ方なども発信している。著書に「登山体をつくる秘密のメソッド−MIURA流登山塾」がある。
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キリマンジャロを目指した理由

キリマンジャロっていつ頃から行こうって思ってたの。

一柳

ミウラ・ドルフィンズに入社したのが2005年で、最初のころは利用者も少なかったんだけど、だんだん増えてきて、海外の山を目指す人たちのトレーニングをしていて、2010年ごろからやっぱり行きたいなって思い始めてたんだよね。その時はまだ下の子が生まれたばかりだし、すぐには無理かなって思ってね。でもだんだん、お客さんから、どこまで行ったことあるんですか?ってよく聞かれるんだよね。

安藤

最高はどこまでだったの。

一柳

富士山以上は行ったことないんですって言い続けて、もうさすがにもうダメなんじゃないかと思ったんだよね。

安藤

それで行こうって決意したんだ。

一柳

夫も2回ぐらいキリマンジャロ行っているのね。話も聞いていたしキリマンジャロに行きたいなって。

安藤

よし! 行こうって決意したのはいつ頃だったのかな。

一柳

2015年の11月ごろなんだけど、10日間も家を空けたことないし、子どものこともあるからどうかなって思って夫に相談したんだよね。年末年始9連休だけど1日休みを取ればキリマンジャロ行けるんだけどなーって。

安藤

旦那さんの反応はどんなだっかのかな。

一柳

行ってくればいいじゃん!って。私も夫も現場を知っておかないと本物の指導や接客はできないっていう共通認識を持っていて、ミウラ・ドルフィンズで高山病の指導やトレーニングを続ける上では、高所登山の経験はしたほうがいいと、夫も勧めてくれたんだ。

安藤

旦那さん経験者だもんね。

一柳

それでも私は、クリスマスから年末年始まで家にいないって、どうなのかなって不安だったんだけど、夫も独立していて、逆に年末年始じゃない時期に行かれたら、仕事も休めないし、子どもの面倒も見られないから行って来い!って。

安藤

旦那さんの後押しは心強いね。でもそれが11月で、年末年始のキリマンジャロって本当に急にだよね。

一柳

そうなんだよね(笑) 行くって気持ちが決まってから、まず知り合いの旅行会社に年末年始で、キリマンジャロツアーをしているところを探して、そのツアーに入れるか問い合わせをしたら、担当者にパスポート大丈夫ですかって聞かれて焦ったよ。完全に切れてた。

安藤

そこは、未確認だったんだ(笑)

一柳

すぐにはパスポートできないし、急いで申請して、準備して本当にギリギリだった(笑)

安藤

ちなみにツアーっていくらぐらいだったの。

一柳

約50万円。自分のために家族の資金を使うわけにはいかないって思って、出版社の知り合いに写真も執筆も私がするので、キリマンジャロの企画を通してくださいってお願いして、原稿料を旅費の一部にしたんだよね。あとは、会社からの臨時の一時金が運良くいただけることになって、旅費に当てた。

安藤

自分で企画を持ち込んだのね! 今度うちにもお願いします(笑)カメラも持っていったんだね。

一柳

ちゃんとしたカメラを持っていなかったから、ミウラ・ドルフィンズと親しかったオリンパスに雑誌の企画も通っているから、登山用にカメラを提供してくださいってお願いして、提供してもらったんだ。

安藤

カメラも交渉したのね!やっぱり普通のデジカメとは違うのかな。

一柳

ダメじゃないけど、やっぱり山をきれいに撮るためのカメラがあったほうがいいからね。

安藤
オリンパスのカメラで安藤さんが撮影。

いよいよキリマンジャロへ

キリマンジャロは10日間だよね。どんな日程だったのかな。

一柳

キリマンジャロは標高5895mで、山の中は5泊6日なんだよね。あとキリマンジャロの麓に2泊。これはスタート前日と、下山した日の2泊で、あとは飛行機泊なんだよね。

安藤

まさにキリマンジャロ登山のためのツアーだね。何人ぐらいのツアーだったの。

一柳

7人。30代が中心で、60代の方が2人いたよ。登山にはケニアとタンザニアのポーターがいて、登山のためのガイドや宿泊のための荷物を持ってくれるから登山メンバーはもっと多いけどね。

安藤
キリマンジャロで安藤さんと現地のガイドさん。

英語でコミュニケーションなの。

一柳

そっちは全然できないから、雰囲気でコミュニケーション(笑)

安藤

雰囲気で乗り切れば問題ないね! キリマンジャロの山頂へはどうだった。

一柳

山頂に行く日は、山小屋を出て、山頂に行って、また山小屋まで戻ってくるまで15時間ぐらい歩かなきゃいけないのね。標高も今まで一番高いところいるし、歩く時間も一番長いし、呼吸を意識してないと意識がなくなりそうなの。

安藤

気絶しちゃうってこと。

一柳

頭が痛いとか吐き気があるってことじゃなくて、意識が無くなりそうな怖さもあって、もうダメだっていうしんどさが一番きつかった。自転車とかランニングならきつかったらリタイヤするとか、ペースを落とすとかできるけど、酸素が少ない中でやめられないきつさっていうか、今までにない感覚を味わったよ。

安藤

それはきつそうだね。それで、山頂での感想はどうだった。

一柳

苦しすぎて早く下山したかった(笑)

安藤

正直だね(笑)

一柳

感動で泣いている人もいるけど、きつくて泣いている人もいたぐらい。山頂にいたのは5分ぐらいで、さっさと写真をとったら早く降りようってなるね。

安藤
山頂を目指す安藤さんのツアー。

キリマンジャロを経験して低酸素トレーナーとしての接客は変わった。

一柳

キリマンジャロはどうだったって帰国したあと、いろんな人に聞かれたけど、楽しかったとかの前に私は大変だったし、しんどかったって伝える。だから海外の高所登山をする人たちには、今まで以上に自分の体験から、大変だからしっかりトレーニングしましょうねって親身に接客が行えるようになったと思う。

安藤

最近もキリマンジャロに行ってるよね。

一柳

2019年には旅行会社が、安藤真由子と登ろう キリマンジャロ登山ってツアーを企画してくれて、事前の低酸素トレーニングをセットにして登山に同行したんだ。2020年も2月に行ってきたよ。

安藤

コロナの時期じゃない。

一柳

そうだったんだよね。出国はできても、帰国できるのかなって不安もあった。空港でも入念なチェックがあったしね。それよりもやっと帰国して、スマホの電波が入るようになったところでメールを確認したら、明後日から学校が休校って連絡がきていて、これは低酸素室も休業になるから、会社に連絡して対応した。

安藤

そうだよね。トレーニング予約の入っている人もいるからね。それで、キリマンジャロはもう3回登っているから、慣れたのかな?

一柳

同じコースで登るし、泊まる山小屋も同じなんだけど、同じだからこそ、きつさも同じで分かっているから、何度登ってても大変さは変わらないよ。

安藤

今後の目標みたいなことはあるかな。

一柳

キリマンジャロを登頂してから、旅行会社の企画でお客様の同行したり、旅行会社主催のキリマンジャロ説明会に講師として呼んでもらったりして、もっと山の勉強をしようっておもってるんだ。だから自分でも登山に行くし、登山に行けない今は登山ガイドの資格取得のために勉強してる。

安藤

それはいいね。ぜひ、真由ちゃんのガイドで登山してみたい! 

一柳

もちろん!

安藤

4回にわたり安藤さんの競技者として挑戦や、低酸素トレーナーとしての心構えからキリマンジャロ登頂のお話をうかがいました。親子で登山を楽しむ一面と厳しいキリマンジャロへ挑戦する一面、登山者の安全を願うトレーナーとしての一面をバランスよく合わせ持っていると、感じました。さらなる今後の活躍を期待してます。今回はありがとうございました。

一柳

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執筆・編集
児童書編集者。今どきの中3女子とゲーム大好き小5男子の母。娘のバスケと息子の野球の応援観戦が週末の楽しみ。今は愛犬のポメラニアン2頭に癒やされる日々。どんなことでもどんな状況でも楽しむことが一番がモットー。