絵本 『ダジャレーヌちゃん世界のたび』の文を書かれた作家の林木林さんに、 担当編集の小熊が、作品への想いと作家としての活動についてお話をうかがいました。今回は、林木林さんがよくいらっしゃるという自由が丘の街が舞台です。
だじゃれ絵本への想い
自由が丘のカフェでよくお仕事をされているそうですね。こちら「自由が丘BAKE SHOP」は初めてとか。
一度来てみたかったお店です。おいしそうなパンが並んでいますね。あとで買っちゃおうかな。よく行くカフェはあるのですが、時々気分転換に新しいお店を探したりもしますよ。
足掛け2年半、ようやく 『ダジャレーヌちゃん 世界のたび』が完成しました。おめでとうございます。最初に、「世界の国を巡るだじゃれの絵本」を書いてくださいとご依頼させていただいたとき、どのように思われたかを聞かせていただけますか。
303 BOOKSの第一弾としてご依頼いただいたんですよね。光栄だなと思いました。それに、だじゃれの絵本を出したいと思っていたので、嬉しかったです。
えっ! だじゃれの絵本は、たくさん出されていますよね。
はい。でも、実は一目でだじゃれの絵本だとわかるタイトルがついているものは、ないんですよ。
たしかに、そうですね。303 BOOKSからは、「ダジャレーヌちゃん」をタイトルに入れたいということは、お伝えしていました。これだとだじゃれの絵本だということは、一目でわかります。
絵本だと、例えば……、「やさい」をテーマにして文章にだじゃれを盛りこんでくださいとか、そういうふうに依頼されることが多いですね。子どもにとって身近な野菜が、かわいいキャラクターになっていて、楽しい言葉遊びで展開していく。小さい子どもたちは、そういうつくりのほうが、お話の世界に入りやすいんです。
おっしゃるとおり、低年齢から楽しめる絵本は、身近なものがテーマとなっていて、それに沿ったタイトルがつけられています。文章は、同じ言葉をくりかえしたり、韻を踏んでいたり、だじゃれになっていたりするものが多いですが、言葉遊びの名前がタイトルに入っているものは、あまりないですね。
でも、もう少し大きい子どもたちの中には、純粋に言葉遊びの本が読みたいなと思っている子もいるのではないかと。そういう子どもたちの目にちゃんと留まって、手に取ってもらえるものをつくってみたいなという気持ちもありました。
言葉のリズムを楽しめる「だじゃれ詩」を
『ダジャレーヌちゃん 世界のたび』では、世界の国の名物、名所、建物、動物…をだじゃれにしていただいています。構想を練る段階でかなり悩まれたと思うのですが、いかがでしたか? ご依頼しておいて、こんなことを聞くのもなんですが(笑)。
そうそう、入れなければいけない言葉は多いし、難しそうだなとは思いましたが、先程お話ししたように、「だじゃれ」がタイトルに入っている絵本をつくってみたかったので、断りたくはなかった。挑戦するしかないと思いました。でも、最初は具体的にどうしたらいいかよくわからなくて。
そして、詩の形にしようと思いつかれたわけですね。
この絵本では「だじゃれ詩」という名前をつけましたが、以前からだじゃれの詩は、個人的に書いていました。 FMわっしょい(山口県防府市のコミュニティFM)のある番組で、「ことばのあそビバ」というコーナーに8年出演していたのですが、そこでは、リスナーの詩だけでなく、自分の作品も発表することになっていて。
そこでだじゃれの詩を?
毎回ちがうテーマに沿って、詩や短歌、俳句、川柳、回文、早口言葉、あいうえお作文※、ぎなた読み※など、いろいろ書きましたね。だじゃれを詩にしたものや、俳句とあいうえお作文を合わせた「あいうえお俳句」、詩の1行ずつが回文になっている「回文ポエム」とかもつくったなぁ……。
※あいうえお作文:お題となる言葉の各文字を、各行の頭文字にして文を作る。
※ぎなた読み:文字の区切りを変えてちがう意味とするもの。「弁慶が、なぎなた持って」→「弁慶がな、ぎなた持って」と誤読した話に由来する。
『ダジャレーヌちゃん 世界のたび』では、だじゃれ詩に入れる言葉をどのように選んでいかれたのでしょう。全部で14か国もありましたが。
だじゃれにしやすい言葉だけを選べるのならよいのですが、あまりなじみのない言葉や知名度のない言葉を取り上げるわけにもいかないですよね。それに、フランスだったらエッフェル塔や凱旋門は、できれば入れたいじゃないですか。
エッフェル塔と凱旋門は、何度も書き直してくださいました。
微妙なだじゃれでも、声に出せばイントネーションや言い回しで、だじゃれなんだなってわかってもらえるんですけど、文字だけだから難しいんです。字面で伝わるだじゃれに限定されるわけですよ。まずは黙読で伝わることが大事ですよね。
どのだじゃれを載せてどれを諦めるか。その辺のジレンマがずっとついてまわりましたね。また、前後の言葉や絵で補うなどの工夫も。
子どもにとって少し難しいかなと思う言葉も、語感のよいものは入れたいと思いました。リズムにのって唱えるだけできっとおもしろいし。純粋に言葉のリズムで遊べるっていうのでしょうか。この本を通して、そういう言葉の楽しみ方を伝えられたらいいなって。
早口言葉のように、噛んでしまいそうになるのも、また楽しいですね。私、校正のとき音読していて、つっかえながらひとりで笑っていました。唱えているうちに、いつの間にかその国の名所や名物を覚えてしまうのもこの本の特徴になっていますね。
だじゃれは声に出したり、人が言うのを聴いたりすると、楽しくなっちゃいますよね。この絵本もぜひ声に出して読んでほしいです。自由に節をつけたり、メロディをつけたりしても。親子で読んで楽しい時間を過ごしてもらえたらとても嬉しいです。
絵本に入り切らなかっただじゃれも、たくさんありました。Twitterで時々紹介させていただいています。
ありがとうございます。本当は全部入れたかったのですが、文字量も絵本には大切ですものね。
校了ギリギリまで、推敲しつづけてくださいました。林木林さんの言葉に対する情熱には、本当に感動しました。このように、数々の作品を生み出しつづけている、「林木林」という作家について、もう少しくわしく聞かせてください。また、今後どのような作品を書いていきたいかなどのお話もうかがいたいです 。