「ふわはね日めくりカレンダー」完成! ふわはね×いしいあや(ニジノ絵本屋)
SNSでの出会いをつなぐ、みんなの日めくりカレンダー。
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「絵本のつなぎて」として1万人のフォロワーをもつふわはねさんが、ニジノ絵本屋のいしいあやさんとタッグを組んで「ふわはね日めくりカレンダー」を完成させました。絵本の良さを広めることでつながったふたりが、短期間でどうやって日めくりカレンダーを完成させたのでしょうか? 企画から完成までの物語とカレンダーに込めた願いを、おふたりに語ってもらいました。
ふわはね(写真左)
絵本を描く人、作る人、売る人、買う人、読む人、読んでもらう人を繋ぎたいと「絵本のつなぎて」として関西を中心に活動を繰り広げる。絵本の紹介や親子の時間が楽しくなる発信を続けるInstagramは、子育て中のお母さんや幼児教育に携わる先生方に支持され、フォロワーは1万人を超える。
石井彩/いしいあや(写真右)
絵本専門店「ニジノ絵本屋」代表。2011年に「ニジノ絵本屋」をオープン。2012年より出版事業をはじめる。絵本にまつわるLIVEパフォーマンスやワークショップなどのイベントを国内外で開催している。
HP・Instagram・Twitter・Facebook
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企画がスタートしたきっかけ
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素敵な日めくりカレンダーの完成、おめでとうございます。どんなきっかけで、この企画が立ち上がったのですか?
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この2年ほど、Instagramのライブ配信で毎朝、日めくりカレンダーを「今日は◯月◯日ですー」って言いながら、めくって使っていて。
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ふわはねさん、ライブをされているのでしたね。朝7時からでしたっけ?
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そうです。朝7時から30分ほど、絵本紹介のライブをやっています。去年の秋、ライブの中で、使っていたカレンダーは来年はつくらないらしい、という話が出たんです。そうしたらフォロワーさんたちに「ふわはねさんに、日めくりカレンダーをつくってほしい!」と言われたんです。毎日ふわはねさんの言葉が見られたら嬉しいと。
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ライブで毎朝使っていた日めくりカレンダーがつくられなくなってしまう、というお話から、企画が始まったんですね。
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そうなんですよ。つくるとしたらどんな機能がほしい? とみなさんに聞いたら、「月の満ち欠けはほしいよね」とか「今日のおすすめ絵本が見られたらいいな」などのアイデアがたくさん出てきました。最初は夢物語だったんですけれど。
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最初はと言っても、話が出たのが10月末ごろで、3月には完成と。そんな短期間でできたとは驚きです。絵は誰にお願いするとか、デザインは誰とか、決めなくてはいけないことが山積みだったと思いますが。
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ほとんどのことがフォロワーさんたちとのやりとりのなかで決まっていったんです。月の満ち欠けの絵ならカワチ・レンさんにお願いしたいと投稿したら、コメントで「いいよー」というお返事がご本人から届いたり。直接お会いしたことはなかったのですが、好きな絵本作家さんでInstagramでつながっていたんです。
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なるほど。フォロワーさんの熱意が、企画を動かしていったのですね。
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そうなんです。そうは言ってもカレンダーなんてつくったことなくて、わかるのはやっぱり出版社さんかなと思って、いつも仲良くしてもらっているニジノ絵本屋のいしいあやさんに相談しました。そうしたらあやさんが「いいじゃん、やろうよ!」と言ってくれて。そうして、夢物語じゃなく本当の企画になったんです。
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あやさんは、企画を最初に聞いてどう思いましたか?
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ふわはねさんとはいつも新しいことを一緒にチャレンジしているので、とくに驚きはなくて「そうか、日めくりカレンダーか!」と自然に受け止めました。でも、月ごとのマンスリーカレンダーならインターネットで製作ツールを見かけたりするけど、日めくりはどうやってつくるのか見当がつきませんでした。
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そうでしょうね。製本にしても、上部の閉じているこの部分は糊張りですよね?
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そうなんです。糊張りの部分は1冊1冊、職人さんによる手作業だそうです。これは専門家に聞かなくちゃと思って、絵本づくりでご一緒してもらっている藤原印刷さんに相談したんです。たくさんのアドバイスをいただき、藤原印刷さんがパートナーになってくれたことで、企画が成立しました。
知識がないことが幸いだった!?
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このカレンダー、絵もとても素敵なんですけど、デザインも秀逸です。表紙のブルーグレーも素敵です。凝ったつくりでありながら、使う人が毎日手元で自分仕様にカスタマイズできていくという、アナログならではのシンプルな良さがあって。
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デザインはカワチ・レンさんの奥様のユリエさんなんです。全体をデザインしてまとめあげるという大変な作業を短期間でやっていただきました。じつは、絵だけではなく、日付の数字もレンさんの手描きなんです。レンさんの絵を知り尽くしているユリエさんがデザインしてくださったからこそ、素晴らしいものになりました。
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4月始まりのカレンダーなら間に合うんじゃないかと、踏み切ったんですよね。フォロワーさんたちは子育て中のお母さんが多いから、年度始めはいいタイミングなんです。保育園・幼稚園も、学校も、4月スタートだから。
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今にして思えば、勢いで始めたから形になったようなものです。知識があったら、私もふわはねさんも、やろう!GO! とはならなかったと思います。
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真ん中にある「今日のことば」は、読み応えがありますね。カレンダーの肝という感じがします。この365のメッセージは、どうやってつくったのですか?
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この欄ができたのはフォロワーさんたちのおかげです。おもに8名の方が製作サポーターをかってでてくれて、それこそ子育て真っ最中の方が、日夜を問わずハードに作業をしてくれました。私は2006年くらいからブログを始めたのですが、そのころにまでさかのぼって、発信してきた言葉を500以上も集めてくれたんです。さらに、好きな言葉はどれか、フォロワーのみなさんに問いかけてくれて。
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ふわはねさんのフォロワーさんが「その言葉を届けてもらって助けられた。だから広くみんなにも知ってほしい」と思った言葉が、選ばれているわけなんですね。文章パターンもQ&Aなどいくつかあって、飽きさせない印象です。
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そう言っていただけると、本当にありがたいです。
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一番下にある「今日のえほん」コーナーは、どうやってつくったのですか?
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まずおすすめの絵本を365冊選んで、季節に分けました。それから、毎月5日は昔話の日、◯の日はおつきさまの日、◯の日はおひさまの日というふうにわりふりました。
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このカレンダーのすごいところは、さりげなく絵本のある生活へと誘ってくれるところですよね。朝めくって、よく知っている懐かしい絵本の名前があったりしたら「今日はラッキデ―だ!」と思えそう。それに「絵本の良さって何だろう」という疑問に答えてくれるメッセージがランダムにちりばめられている点も、魅力です。
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とにかく、やりたいことを全部詰め込みました。メモ欄もつくったのですが、ここには例えば、赤ちゃんが初めて発した言葉とか、お子さんが今日読んだ絵本などを書いてもらえたらといいなと思ったんです。
SNS時代だから生まれたアナログのコミュニケーションツール
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絵本を介してともに活動していらっしゃるおふたりですが、ふわはねさんにとってはこのカレンダーが初めての出版物になるのでしょうか?
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そうなんです。言葉を紙に残してみたいという気持ちは、自分の中でずっとあたためていたのですが、まさか、初めての出版物が日めくりカレンダーとは! という思いです。周りの人にも「ふわはねさんらしいよねえ」と言われます。
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日めくりカレンダーは、イラストレーターや写真家の方などが作品発表のひとつとしてつくる場合もあるそうで、今回の企画を藤原印刷さんに相談した時、私も「ニジノ絵本屋さんらしくていいんじゃない?」と言われました。
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本格的に乗り出す前に言われて怖くなったのが「カレンダーは3月31日までに売り切らないと、その後売るタイミングが永遠にこないよ」という言葉でした。本なら在庫を残しておけるけれど。100部売れるかどうかと思っていたので、たくさんの方が買ってくださってびっくりしました。
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「日めくりカレンダー」はとても企画性の高いコンテンツですよね。書籍よりも、自分のことがよくわかっていないとできない企画かもしれないです。
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ふわはねさんがライブで、日めくりカレンダーを使ってフォロワーさんと交流する様子を、私も見ていました。だから、新しくつくったカレンダーがSNSで人と人をつなぐためのアナログのコンテンツになることが簡単に想像できたんです。そういう意味では、企画性が高いと言えるかもしれません。
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インターネットを通じてであっても、みんなが同じアイテムを持って集うのは素敵なことですよね。スマホでは置き換えできない紙ならではのものを、自分のものとして持っていたいという気持ちがありますから。
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フォロワーのみなさんといっしょに、朝、めくっていけるといいなあという願いを込めてつくりました。色を塗ってみたり、ノートに貼ったり、好きなように使ってほしいです。めくれない日ももちろんありますよね。3日空いたときには、3日分めくって「ああ忙しかったなあ」とリセットしてもらえたら。
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アナログの良さですね。音楽で言うと、インターネット配信が主流のなか、レコードやカセットテープを好んで集める人も増えています。アナログでしか出せない音もあるわけで、新しいアルバムをテープでリリースするアーティストもいたり。それと同じで、アナログならではの価値を与えることができれば、紙のアイテムにも十分需要があるはずです。
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そうかもしれませんね。紙だと、こだわりの価値をさらに表現しやすいかも。カレンダーが減っていく時代だからこそ、毎日めくるという動作の価値を伝えられるというか。
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このカレンダーの企画が生まれたInstagramは、双方向のSNSですよね。一方的に私が言葉をかけるんじゃなくて、みんなが発してくれる言葉を、私も拾いたい。それができるから、自分がいきてくるのかなと思います。
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SNSでそんなよい仲間をつくることができるなんて、改めてびっくりです。
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コロナ禍も悪いことばっかりじゃなかったと思えますよね。直接会えないからこそできる関係性というものがあるんですね。フォロワーさんもサポーターのみなさんも、本当にあたたかくてやさしい人達です。
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絵本を介して集まった人達、ということが大きいのかもしれません。絵本を好きな人には、やさしい人が多いです。
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これからも毎年、カレンダーをつくることになりそうですか?
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何年か、つくり続けられたらいいなと思って一歩を踏み出したというところはあります。とにかく今年つくってみて、ISBNコードをつけて流通させることができそうならやってみようかと。たくさんの人にお届けできる態勢をつくることができればいいですね。
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このカレンダーが、みなさんの暮らしに寄り添い、毎日の楽しみになってくれたら嬉しいです。