稲垣さんに初めてお会いしたのは、「まるでお店!なほめられ♡レシピ」(講談社)でご一緒したときでした。主婦層をターゲットにした雑誌「サンキュ!」(Beneese)の読者モデル「サンキュ! フレンド」を卒業して、フリーランスとしての道を歩み始めたというタイミング。当時、「人間にやれないことはない」と仰っていたことが忘れられません。あれから7年で今やテレビに引っ張りだこ。どうやってここまで辿り着いたのでしょうか。
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前回(第2回)では、「サンキュ!」フレンドに応募した際のエピソードと、Instagramのフォロワーを1年で1万7000人増やすためにしたことを伺いました。ある分野に特化することで、取材オファーが増えてテレビに出るようになった稲垣飛鳥さん。仕事をする上で気をつけていることはどんなことでしょうか。
テレビに出るってすごいことですよね。2021年には何本出ましたか。
50本近く出ています。
そうですよね、もはや稲垣さんの出ているテレビが追えないですから。お話を聞いていると、ご自身の強みを活かしていると思うんです。やっぱりブランディングが上手なのかと思うんです。「稲垣飛鳥」というブランドをどう作っていくかは考えていましたか。
私は得意なことしかやってないんですよね。だから「Châteraisé」とか「ドン・キホーテ」なんかは、何を聞かれても大体答えられるんです。ドンキなんて普通に好きで行ってただけで、たまたま記事を書いたらバズったからすごくラッキーでした。「ドンキ、大好きなんで書きます!」って言って書いたら記事がバズりまくって、そういう目を持ってたのは「ヨムーノ」の編集長(元サンキュ!の編集長)なんですけども。
いろんな人との出会いで繋がっていきますね。でも出会いを作ってきたのは稲垣さんご自身です。
そうね、そうやって声をかけてもらえたのはありがたいです。
チャンスを掴んでも活かせないことってたくさんありますから。
自分で仕事を始めたころは、一回の仕事で「稲垣さんとやって良かった」と思われようという気持ちでやっていました。やっぱりリピートしてもらいたいですから。
そうですね。大事ですよね。
あとは再現レシピやフルートが吹けるなど自分の強みを、初めての仕事へ行ったときに、しゃべれるチャンスがあるならアピールして帰ってきます。
すごいなあ。前にお話を伺った際には、クライアントさんのホームページは隅々まで見ると仰ってました。
そう、隅々まで読んでいますね。
そこ多分やっている人かなり少ないと思います。
そういえばこの間、菊地亜美ちゃんとお仕事したときに、元々見てたんですけど、会ったときに色々とおしゃべりできるようにYouTubeをめっちゃ見ていったんです。そしたら「稲垣さん事前準備半端ない」って言われました。
ほら! ははは。
「めっちゃ見てるじゃないですか!」って言われて。でも、そればっかり見てたわけじゃなくて、洗濯物畳みながら見てましたけど。ただ、話すきっかけって大事じゃないですか?
それは相手に興味を持たないとできないことですね。
やっぱり基本的なことは知ってないと失礼だと思うから。特に芸能界の人と仕事をするなら、全然知らない場合はWikipediaを読んだり、最近どんなものに興味があったかをチェックしたりはしています。ちょっとでも会話できる時間があるなら準備します。
なるほど、例えば番組収録前に顔合わせで仲良くなって仕事をやりやすくする感じですかね。
そうですね。共演者が決まった時点でSNSやブログをフォローします。
そういうの時間かかるじゃないですか? YouTube見たり、ホームページ隅々まで見たり。どうやって時間を使っているのか不思議に思ってしまいます。
私は段取りが好きなんですよ。だから夕飯は17時半ぐらいからです。
早い。
遅くても18時までには食べるんです。その時間にちゃんとできてないと嫌。慌てるのもすごく嫌なの。今日はちょっと忙しいから「これを事前に作っておこう」とか、「この準備だけはしておこう」っていうくらいの段取りですけど。
それいつやるんですか? 午前中?
1週間の仕事の予定が前週ぐらいには分かっているから、逆算しています。帰る時間が遅くなる日は、簡単に調理できる献立を考えたり、午前中に時間があれば準備しておいたりします。そういう時だけ子どもたちに洗濯物取り込んで畳んでもらう、お米を炊いておいてもらう、という指示をすることもあります。
なるほど。子育ても段々とお手伝いしてもらえるようになってきますね。
(※稲垣さんは中2と小5のお子さんがいます)
ただ、予想よりも家に帰る時間が遅くなる日もあって、この間は17時半に帰ってきたんです。本当はもっと早く終わる予定だったのが遅くなって、ご飯の準備もゆっくりできなくなってしまったのですが、18時半にはおかずが5品完成していました。
すごいですよね。段取りはどうやってるんですか。
その日は、キムチチャーハンを作ることを決めていました。冷凍ご飯があるからご飯は炊かなくていい、キムチもある、豚肉もチルドに移している。中華スープも豆腐と卵とわかめで簡単にできる。それだけじゃ足りないから、魚を焼いて、サラダを洗って、もうひとつかぼちゃサラダ。同時にもうめちゃめちゃ色々やってますね。
もう頭も手もフル回転ですか? コンロとかも全部。
なんならリュック背負ったままやってます(笑)
アッハッハ。
帰ってきた瞬間、子どもたちに「ママすっごい忙しいから、今からこれ片付けといてな」みたい指示を出しながら、リュック背負ったまま作りだして……。
すごい。
大阪出張がある日はご飯を冷凍にしたり、子どもたちが好きなものスーパーで買ってきてもらうこともあります。
「ゴールをこうする」って決めているから、この時間までにこれを作って…と、そこに向かっていく勢いですよね。終わりを決めておいて、なあなあにしてないから上手くいってる気がします。
あーそうやね。
娘さんのピアノもそうだと思いました。コンクールに合わせて譜読みを1日でここまでやるって言ってたのが印象的でしたもん。
そうですね。確かに確かに。
逆算するだけって、さっきもおっしゃってたけど。
受験なんかもそうかもしれませんね。でも今の自分があるのは、色々経験して分かったことだから。段取り良くするとどんな良い効果があるか、この段取りの時についでにこれもできる、という経験をしてきたからこそかもしれません。これは45年生きてきた経験ですよね。
そうですね。
やっぱり不安がある状態はなるべく減らしたいですね。仕事するときにも、テレビで料理を発表するとそれを見て作る人がいるから、「おいしくない」とか「失敗した」ということがあったらダメだから、試作段階で何度も作り直します。
へぇ~!
作り直して、ちょっと不安な点…例えば調理器具によってできあがりが変わるものは、ディレクターさんに「電子レンジの調子によって焼き時間が変わるから、注意書き入れてください」と必ず言いますね。不安なまま「大丈夫です」なんて言ってしまったら、ずっと不安なままで自分がしんどいから。
なるほど。
そういう意味では試作の量は半端じゃないです。
適当なことはしないのが稲垣さんですね。
でもそれも最近分かり始めたことです。
最近なんですか?
適当にやっていたつもりはないけど、「こんぐらいでいっかな」みたいなものは、数年前まではあったと思う。食べ物だしすべて自分の責任だから怖いですよね。
うんうん。
やっぱり嘘つきたくないですから。
「嘘つきたくない」って稲垣さん初めの方でも仰ってましたね。
うーん、例えば広告で紹介する物は、自分が本当にいいと思った物でないと紹介したくないというか。
嘘って見抜かれそうですもんね。
やっぱりどんなものでも自分が本当にいいと思ったものを、これからも偽りなくやっていきたいです。
ありがとうございました。