LGBTフレンドリーな会社の求人を集めたサイト「JobRainbow(ジョブレインボー)」を立ち上げた、代表の星賢人さん。前回はご自身のライフヒストリーと事業を立ち上げた理由について伺いました。2回目は具体的に企業がどんな取り組みをしているのか、具体的な事例をあげながらお話くださいました。
「LGBTQ+」が社会で輝くために
セクシャルマイノリティと企業を繋ぐ「JobRainbow(ジョブレインボー)」 とは?
ジョブ・レインボーが大きくなるということは、それだけLGBTQ+に対することに興味を持っている企業が増えてきている証でもありますね。
増えてきていますね、それは年々感じます。
ここ最近でぐっと私も感じるようになってきました。ジョブ・レインボーを立ち上げられたときと今にいたるまでに変わってきたことがあれば教えて頂けますか。
ここ数年でいくつかの波がありました。日本はすごく海外の影響、特にアメリカの影響を受けやすい傾向があります。ただアメリカは敬虔なカトリック信者も多く、意外と同性婚を認めたのは最近なんですよ。当時アメリカにいた友人に聞くと「まさかアメリカでこんな法律ができるとは思わなかった」というぐらいに。そのあとすぐに日本では渋谷区でパートナーシップ制度ができました。同性パートナーシップ制度を認めている自治体は全国で大体3分の1ぐらいあります。つまり人口の3分の1をカバーしているんですよ。
自治体も一気に広まった感じがしますね。
今や117の自治体が同性パートナーシップを認めていますね。でも国レベルだと与党自体は同性婚には基本的に消極的です。
保守的ですからね。
ただ自治体では人口カバー率が非常に大きくなっているので、国政も変わらざるを得ない流れがきていると思います。こういった行政における波と、経済的な流れで言うと東京オリンピックがひとつのターニングポイントでした。なぜかというと、ソチ五輪でロシアがLGBTQ+に関するプロパガンダを禁止する法律ができたんです。つまりLGBTQ+関連の広告を企業が出すと罰せられてしまうのです。
そんなことあったんですねソチ五輪。
それに対してアメリカやヨーロッパの有名人がソチ五輪の開会式をボイコットしたんですよ。それを受けて東京オリンピックからは、オリンピック委員会が建設する際の物資やサービスの調達で、「LGBTQ+差別の禁止を掲げる企業としか取引しない」というルールを決めたんです。
おおー。そうだったんですね。
これを受けて、日本のスポンサー企業が「ヤバイ! 変わらなきゃ」となってきた。日本は大企業があらゆる中小企業を支えているっていう構図があるじゃないですか。
そうですねー。
だから大企業が変わると、どんどん中小企業も変わっていくんです。日本は右向け右で、誰かがやったら自分もやらなきゃという流れは早いです。
その話は実はさっき日本人は染まりやすいとカメラマンとしていました。だからこそ、よい意味でも変わる時は早いですね。
そうそう。経済界がそれでまさに変わっています。
今、拝見しているパンフレットの事例も大企業が多いなと思ってみていました。
ああそうですね。
多くの大企業がLGBTQ+の取り組みをしている理由のひとつにオリンピックがあったとは知りませんでした。
大きなきっかけでした。それで今度は2020年6月からパワハラ改正案が施行されて……。
そうなんですね、それは恥ずかしながら知らなかったです。
それも弊社にとっては大きな意味があって、パワハラ改正案できたから、大企業もLGBTQ+に関するハラスメントを取り締まったり、防止処置をおこなったりしなければならなくなりました。こういうマニュアルの導入や研修、コンサルをジョブ・レインボーが提供しています。
今どんどん変わっている最中だと思いますが、具体的に企業がどういった取り組みをしているか気になります。
そうですね。私の本でも巻末に各企業の取り組みまとめています。
これってあれですか? 星さんがアドバイスしているのですか?
あ、そうですね。基本的に本に載っている企業は弊社が研修をさせてもらっています。
研修ではどんなことをお伝えしているのでしょうか。
昨日も大手ホテル企業さんで研修してきましたが、そもそもダイバーシティというものが経済にどのような影響を与えているのか、ということやLGBTの説明ですね。「Q」とか最近言うじゃないですか。
そうなんですよね「Q」。どれにもあてはまらないみたいな。
クィアとかクェスチョニングって意味があって、性的少数者全般やまだ自分の性について考え中の方を表す言葉ですね。こういう簡単な、簡単じゃないかもしれないんですけどLGBTの説明と、からだの性、こころの性、ふるまう性、好きになる性、この性の4要素によって人の性が決まっていくというお話をしました。まさにさっきのオリンピック委員会の話などをしていますね。ホテルさんだと自治体のパートナーシップの話や、同性婚のウェディングのプランなどを結構アピールしています。
最近うちでも取材しましたね、田中史緒里さん。それこそ女性(性)の体にあうスーツを作ったり、同性婚のウェディングもプランニングされています。
いつか繋がるかもしれない。
えーすてき! スーツいいですね。かっこいい方ですね。スーツもめっちゃ似合ってます。
ね。
ウェディングの接客面で言うと当事者の方から相談を受けたとき、例えば「同性でも結婚式挙げられますか?」と聞かれると、担当者が「あ、ちょっと確認しますね」とか「上の者に」と言ってしまうことが多いんですよ。そうじゃなくて、まずは「おめでてとうございます」と普通に言いましょうといった、コミュニケーションの指導もしています。何気ないコミュニケーションは、LGBTQ+について全然知らなくてもできることがたくさんあるんです。気をつけるべき言葉とか……。
気を使うってどんなシーンでも大切なことですものね。このパワポで説明されるのですね。
今129ページあって、これを2時間で話します。
(パワポを見ながら)あれ、今LGBTQ+の方は11人に1人って書いてました?
そうですね、全人口の8.9パーセント。
多いですね。
1100万人です。
これは最早マイノリティではないですね。
マイノリティとは言わないですね。
佐藤さん鈴木さん高橋さん田中さん伊藤さん渡辺さんの6つの苗字あわせた数と同じくらいって言われていて。
もう全然少なくない。何で少ないと思ったんだろう。私も今履歴書の話で男と女にチェックする話を「あっ」と思って、なぜそこが分からなかったのかと思いました。今までのルールに当たり前のように従っていたら、固定観念みたいに染みついていたみたいです。
そうですね。
小さい頃からやっているとね。
そう、そこに気づかないっていうのがまずよくないですね。啓蒙すべきところですよね。
そうなんですよ。やっぱり職場の人から「カミングアウトされた」「カミングアウトしている」と聞いたことがある人は約6.6%しかいないんですよ。聞いている側がそれぐらいしかまずいないし、当事者のデータでも職場の同僚などにカミングアウトしている人って約3%しかいないんですよ。
みんな隠していると。
基本的に隠しています。
やっぱり言えないものなんですね。カミングアウトしたときの相手の反応が怖いというところがやっぱりあるんですか?
あー、そうですね。
カミングアウトしなきゃいけないっていうのもどうなんだろうとも思いますが……。
カミングアウトがやっぱり自分の不利益になると考えている人がすごく多いです。大体その割合が82%にのぼるんですね。つまり8割以上の人は、カミングアウトっていいことないよねと思っています。なぜかというと、およそ69%の人が職場での差別的言動を経験しているから。ただ、カミングアウトをしたいと思っている人も42%くらいいるんですよ。
やっぱりそうですよね、中々言えないものですよね。
逆に言うと会社で働きたいって思っている人は89%います。でもLGBTフレンドリーな会社を一社も知らないっていう人が54%で、半分以上の人が存在を知らないです。フレンドリーな会社が増えてはいますが、情報が当事者に届いていないのが現状です。
なんかそんな感じしますよね。
当事者は情報がほしいけど、情報をもらえていない。提供者側もいるし、それを欲しがっている人もいるのに届いていないという情報の非対称性があります。その非対称性をジョブ・レインボーがテクノロジーとして求人サイトという形で発信をしています。
星さんがネットカフェ通学していたときに、テクノロジーに感動して、ここにつながるってすてきです。うまくマッチングができると双方がハッピーですよね。
そうです。あとセクマイ(セクシュアルマイノリティ)女性向けのマッチングアプリ「PIAMY(ピアミー))や、新卒向けのロールモデルSNSを今開発していてます。「PIAMY」は既にアンドロイド版はリリースしています。
すごい、そんなのがあるんですね。セクシャルマイノリティの男性向けは無いんですか?
男性向けいっぱいあるんですよ。
あ、そうなんですか。
ゲイ向けって結構いっぱいあるのですが、女性向けは全然ないんですよ。
確かに女性の方がカミングアウトする率低そうですし、アプリがあるといいですよね。なんだか世の中が色々変わってきているように感じます。星さんという存在が社会を変える存在なのでは?
ああ、いやとんでもないです。