303 BOOKSのリモートワーク・ミュージック

色褪せない松本隆の詞

この記事は約5分で読めます by 加藤季余乃
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朝から夜まで気分に合わせて

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皆さん、こんにちは。アシスタントの加藤です。
だんだんとあたたかくなり、散歩をするのが楽しい季節になってきました。
いまだ人と会うことが難しいご時世ではありますが、心ときめくものを見たり、聞いたりして、日々を彩り、楽しむことも大切です。
今回は、私の心のときめきのひとつ。
松本隆さんが手がけた名曲について、(ほんのすこし)綴ります。

かとうきよの
加藤季余乃

散歩と喫茶店巡りが好き。珈琲を嗜むことに憧れているが、苦味にまだまだ慣れない。道すがら、神社やお寺を見かけたら、参拝して御朱印を頂くのも趣味の一環。

    君は天然色

    1981年に発表された、大滝詠一さんの大ヒットアルバム『A LONG VACATION』の収録曲の一つ。2021年3月には40周年バージョンのアルバムが発売され、今なお多くの人に愛され続けています。

    大滝さんの優しい歌声と心弾むような楽しい曲調が印象的ですが、歌詞からは、もう戻ってこない大切な人との過去を思う、寂しさが感じられます。

    有名なお話ですが、アルバムの制作が進められる最中、松本さんは妹の病死という悲しい出来事に直面されました。

    作詞を断ろうとしたほど、苦しみを抱えながら、その時に見えた情景を、この歌の詞にも投影されたそうです。

    『手を振る君の小指から 流れ出す虹の幻で 空を染めてくれ』
    (『君は天然色』歌詞より一部引用)

    当時の思いは、優しいきらめくようなメロディーに乗って生き続け、40年がたった今でも、なお強い魅力を放って多くの人の心を打ちます。

    君に、胸キュン。

    テクノポップスグループYMO(YELLOW MAGIC ORCHESTRA)のヒット曲。

    それまで、RYDEENTECHNOPOLISなど、近未来的でスタイリッシュな楽曲を手掛けてきたYMOが、アイドルのように爽やかに歌う姿が話題に。

    『君に、胸キュン。(キュン)』
    (『君に、胸キュン。』歌詞より一部引用)

    さざなみを感じさせる涼しげなメロディと歌声に乗って、何度も登場する「胸キュン」というフレーズは、聞く人の耳に、可愛く小さなインパクトを残します。

    「胸キュン」は、この曲が使われた化粧品CMのキャッチコピー。

    松本さんは、その言葉をそのまま歌詞に使いました。

    今でもいろいろな場所で耳にする名フレーズは、この曲とCMをきっかけに広まったそう。

    木綿のハンカチーフ

    歌謡界のゴールデンコンビ、筒美京平さんと松本隆さんによる言わずとしれた不朽の名作。

    2021年3月に発売された、筒美京平さんのトリビュート・アルバム『筒美京平SONG BOOK』では、女優の橋本愛さんが『木綿のハンカチーフ』を歌っています。

    youtubeでは、一発撮りのパフォーマンスも公開されました。

    透明感のある歌声で、遠く離れた恋人を思い合う男女のストーリーが綴られ、短いドラマを見たかのような感動を味わうことができます。

    『都会で流行りの 指輪を送るよ』
    『あなたのキスほどきらめくはずないもの』

    (『木綿のハンカチーフ』歌詞より一部引用)

    男女それぞれの視点を交互に描くこの歌は、聞く人によって、ちがうイメージを想起するかもしれません。

    歌が進むうちに、二人の悲しい結末は予感されるものの、正しいことは一つではなく、数多の感情を秘めていることがこの曲の魅力といえます。

    風をあつめて

    ロックを日本語で歌うことに賛否両論あり、論争も起こったという70年代に、はっぴいえんどは、全て日本語の歌詞の曲を収録したアルバム『はっぴいえんど』を公表し、デビューしました。

    活動期間は短かったものの、メンバーの大滝詠一さん、鈴木茂さん、細野晴臣さん、松本隆さんは、その後も活躍して音楽業界に大きな影響を与えています。

    『風をあつめて』は、はっぴいえんどの二枚目のアルバム『風街ろまん』に収録された歌の一つ。

    「起きぬけの路面電車が 海を渡るのが見えたんです」
    (『風をあつめて』歌詞より一部引用)

    どこかけだるげな歌声と、まるで文学作品のような松本さんの詞によって描かれる、古き東京の日常風景には、郷愁感が滲み、漂います。

    この曲を聞くと、慌ただしく進む時間を引き止めて、ゆったりと今を楽しむ、自分の心を取り戻すことができるのです。


    松本隆さんが作詞された歌を、一部を紹介させていただきました。

    仕事や家事、やらなければならないことに追われたときは、ぜひ自分のお気に入りの音楽を再生して、ホッと一息ついてみてください。

    見ている世界が広がって、元気が出たり、面白いアイデアが浮かんだりするかもしれません。

    今回紹介した歌も、皆さんの心を彩る方法の一つになれば嬉しいです。

    散歩中に見かけたひとコマ。ときどき外に出て景色を眺めるのも、またときめき。

    CREDIT

    クレジット

    執筆・編集
    303BOOKS編集スタッフ。コーヒーをいれることにハマっているけれど、ブラックコーヒーが飲めず、ミルクをいれたカフェオレしか飲めないことを、ちょっとだけ気にしている。
    イラスト
    1994年、福岡県生まれ。漫画家、イラストレーター。第71回ちばてつや賞にて「死に神」が入選。漫画雑誌『すいかとかのたね』の作家メンバー。散歩と自転車がちょっと好きで、東京から福岡まで歩いたことがある。時代劇漫画雑誌『コミック乱』にて「神田ごくら町職人ばなし」を不定期掲載中。