時代劇に、キュン!#2

「必殺仕事人」の巻

この記事は約4分で読めます by 楠本和子

昭和の時代には、毎日のように、テレビで普通に見ることができた時代劇。
令和のいま、その存在のありがたさを思い出しています。
愛すべき時代劇と、時代劇を愛する人たちに、エールを送ります。

時代劇をよく知らない人でも、一度くらいは『必殺シリーズ』のどれかを見たことがあると思う。このシリーズ、そもそもは、「仕掛人・藤枝梅安」(原作・池波正太郎)が始まりだ。これがテレビドラマになったのが、1972(昭和47)年というから年季が入っている。

裏稼業についた人たちの名称もさまざまで、仕掛人・仕留人・仕置人・仕業人・からくり人・仕舞人…等々、いったいいくつあるんじゃ! と叫びたくなるほどあるのだが、時代劇好きの私は、結構な頻度で見ていた気がする。途中で、放送局が変わったりとか、いろいろ大人の事情もあったらしいが、子どもだった私には関係ない。いつも名だたる俳優さんたちが出演していて、山田五十鈴や京マチ子といった、あこがれの女優さんが主人公のシリーズもあった。

さて、『必殺シリーズ』の魅力は、なんといっても“殺し技”の豊富さだろう。

刀でバッサリは普通、三味線のバチで切る、かんざしでブスリ、素手で心臓をぐにゃり、三味線の糸で吊り殺す、組紐で吊り殺す、花の枝で刺し殺す、木製のバットで殴り殺す、口の中に花火を放り込んで爆破! などという、ヤバすぎる殺し方もあった。殺しの場面のBGMとともに、光と影を操って、悪人どもを始末していく。殺しの依頼人は、大概もう悲しい死を迎えているので、めでたし、めでたしとはいかないけれど、この“殺しのシーン”は、鬱屈された心がスカッとする、クライマックスなのだ。

数多い『必殺シリーズ』の中でも、人気を博したのが、藤田まことが演じる“中村主水(なかむらもんど)”だ。

中村主水は、「昼行灯」の異名を持つ町奉行所の同心で、裏稼業の仲間からは、いつも“八丁堀”と呼ばれていた。妻りつ(白木万理)、姑せん(菅井きん)とともに役宅で暮らし、「あなた!」「婿どの!」と呼びつけられて、いびられるくだりもおなじみだ。主水には出世欲も無く、のらりくらりと世間をわたっているが、一旦、裏の仕事に取り掛かると、あの伸びきった馬ヅラが引き締まり、苦み走った、眼光鋭い殺し屋へと変貌するのだ。刀の腕も申し分ないのだが、真向勝負じゃなく、表情をぴくりとも変えずに、悪人の横からグサリというのにもシビレタ。カッコいいとはこういうことだね。

中村主水が率いていた“必殺”のほとんどが「必殺仕事人」のシリーズだった(例外もある)。なかでも「必殺仕事人Ⅴ」は、組紐屋の竜(京本政樹)、花屋の政(村上弘明)が登場して人気があった。これは、前のシリーズで人気があった、飾り職人の秀(三田村邦彦)と三味線屋の勇次(中条きよし)の人気を上回るほどで、時代劇というジャンルが、一部、アイドル化した感じだった。秀や政は、時代劇につきもののカツラをつけず、地毛で演じていたし、若くてハツラツとしていて爽やかだった。二人とも毎回なぜか、殺しの場面が始まると、夜の街中をダッシュさせられていたものだ(一体どこまでいくつもりなんだか…)。

三味線屋の勇次は、流し目が色っぽく(子ども心にもそう感じた)、悪人の首に巻きつけた三味線の黄色い糸を「クゥーーン…」と引き、「ピン」とはじいて殺す。組紐屋の竜は、色白で細身でクールだが、殺し方が派手だった。か細いくせに、組紐を使い相手を屋根まで吊るし上げて殺すのだ。

政が持つ鮮やかな花の色、竜が持つ赤と黒の組紐、暗闇、光る主水の刀身…。光と闇が交錯する“殺し”のシーンと、まるで西部劇のようなド派手なBGM。いやあ、思い出すなあ…。ちなみに、仕事人の音楽は、京本政樹が作曲していたものもあったらしいよ。驚きだよね。

「必殺仕事人Ⅴ」の裏稼業の仲間には、西順之介(ひかる一平)、何でも屋の加代(鮎川いずみ)、おりく(山田五十鈴)もいた。何でも屋の加代ってさあ、いつも金儲けが中心で、セコいし、がめついんだけど、なぜか憎めなくて、私は好きだったなあ。うん。

そういえば、シリーズ中のどの番組だったか、誰がやっていたのかも覚えていないのだが(なんせ子どもだったもので…)、レギュラーメンバーの一員が殺されてしまうというショッキングな場面があったのを思い出した。いまでは、驚くほどのことでもないが、当時、私が見ていたテレビドラマの中で、そんな場面をみたのは初めてだったと思う(「太陽にほえろ」の殉職シーンより前だったよ、確か)。

さて、「必殺仕事人」は、現在も引き継がれていて、地上波でも、たまにスペシャル版が放送されている。もちろん、我らが中村主水も健在だ。キャストが、東山紀之をはじめとするジャニーズが中心になってしまったのは、時代の定めというべきだろうか…。とはいえ、テレビの地上波から時代劇が姿を消してしまった今、じつに貴重な存在なのだ。やはり、「必殺仕事人」は、時代劇の名作の一つといっていいだろうと思う。

いつの世にも、晴らせぬ恨みはつきものだ。晴らせぬ恨みは、すっきり、さっぱり、仕事人に晴らしてもらいましょう。

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執筆
神戸市の生まれだが、東京での暮らしも、すでに、ン十年。 根っからのテレビ好きで、ステイホーム中も、テレビがずっとお友だち。 時代劇と宝塚歌劇をこよなく愛している。
    イラスト
    1994年、福岡県生まれ。漫画家、イラストレーター。第71回ちばてつや賞にて「死に神」が入選。漫画雑誌『すいかとかのたね』の作家メンバー。散歩と自転車がちょっと好きで、東京から福岡まで歩いたことがある。時代劇漫画雑誌『コミック乱』にて「神田ごくら町職人ばなし」を不定期掲載中。