夕立のアンティオキア ―パイサの生き方―#2

メデジンに恋して♥

この記事は約8分で読めます by ユースケ“丹波”ササジマ
ゆーすけたんばささじま
ユースケ“丹波”ササジマ

株式会社オフィス303の元社員。黒豆で有名な兵庫県丹波篠山市出身。2017年に日本を飛び出して1年ほどラテンアメリカ諸国を行脚する。現在はライターやフリー翻訳者として働きながら超低空飛行で生き延びる。

観光も食も弱いけど・・・。

でかい岩とかも見ごたえありそうだけど、外国人がメデジンに来て高い確率で訪れる観光地とか食べるものとかは何なの? 東京でいう雷門みたいなやつ。

心平

プエブリート・パイサですね。小さい山の頂上に伝統的な家や教会のレプリカがある場所で、そこからメデジンを一望できます。夜景はとくに綺麗ですね。

笹島
プエブリート・パイサ
小さな村を模した広場があり、食べ物屋や土産物屋がある。そこから階段を登ればメデジンをほぼ360度見渡せる場所が現れる。

いいね〜。ほかはなにかある?

心平

プエブリート・パイサからじゃなくても美しい夜景は見られます。ほかには博物館や有名なカフェとかあることはあるんですが、個人的に特筆すべきスポットは無いですね!

笹島
メデジンの夜景
山の上に住む友人宅からの風景。メデジンは大きな盆地なので、夜景を見下ろすスポットはたくさんある。

ないんかい! 食べ物はどうなの?

心平

いろいろありますけど、Bandeja Paisa(バンデハ・パイサ)ですね。直訳すると「パイサの盆」っていう意味で、お盆の上に米、豆、アボカド、ひき肉、チョリソー、ブラッドソーセージ、卵、皮つきの豚肉の唐揚げ、プラタノ(でかいバナナ)がのっているご飯で、パイサたちのソウルフードです。

笹島
バンデハ・パイサ
いろいろ入ってボリューム満点。妻の叔父(医者)からは「脂過多で体に悪いから食べんなよ」と注意されている。体に悪いものは旨いのだ。

おお、いいじゃん。色々入っておいしそうだね。コロンビアも米とか豆を食べるんだ。

心平

そうですね。米はさておき、この豆はインゲンマメで原産は中央アメリカですからね。

笹島

コロンビア料理というか、メデジンの料理は基本的においしいの?

心平

おいしいですが、大好物の日本料理やイタリア料理、中華料理のようなレベルではないですね。いわゆる「普通においしい」です。ただ、フルーツは日本と比べものにならないぐらい種類が豊富でおいしいものばっかりですよ。あー、でも「ばっかり」は言い過ぎかな。

笹島
メデジンのフルーツ
右からサポテ、グアナバナ、ピタアジャ(ドラゴンフルーツ)、パパジャ(パパイヤ)、ルロ、グアジャバ。カッコ内は日本での名前。

日本で二十数年暮らしちゃうと、食へのハードル高くなるよね。

心平

結論としては、特筆するほどの魅力的な観光地も食べ物もないですね。日本でいうとどこでしょうね。

笹島

こらこら。わざわざ波風立つようなこと言わないで(笑)

心平
メデジンの人々

メデジンの魅力は「人」!

観光スポットも食べ物も正直あんまりパンチない感じだけど、メデジンに住み着いたのは何かしら惹かれたものがあるからだよね。それはメデジンの方言以外に何かあるの?

心平

やっぱり魅力は人ですね。自分が訪れたラテンアメリカ諸国の都市の中で、ここメデジンの人が特に親切で、かつ敬意をもって接してくれていると感じますね。他の国や都市で出会った人の中にそういった人はいましたが、メデジンはその割合が多いように思います。もちろん、僕の主観ですが。

笹島

そうなんだ! けどもちろんメデジンで嫌な思いしたことはあるんだよね?

心平

ありますよ。ほかのスペイン語圏の国よろしく街中で「チノ!(中国人)」って叫ばれることがたまにあります。まぁ、相手にしないので別にどうでもいいですが、気分はよくないですよね。ある揉め事でしつこく嫌がらせをされて最終的に殺害予告を受け取ったこともあります。

笹島

スペイン語圏で暮らしたり旅をしたりするアジア人のあるあるだね。物を売りつけたいならまず出身がアジアのどこか聞いて丁寧に接客すればいいのにね。でも、こういっちゃあれだけど、今のササジの見た目はアジア系マフィアの要素がちょっと入ってるから、紛らわしいっちゃ紛らわしいね(笑)。殺害予告は単純に怖いよ! 何もなくてよかった。

心平

私の主観通り、もしメデジンには親切で敬意をもって外国人に接する人が多いということが本当なら、それはおそらく彼らが背負わされた悪いイメージを払拭しようとしているからじゃないかなと勝手に思っています。

笹島

悪いイメージっていうのは、パブロ・エスコバルとか麻薬組織がらみの?

心平

※パブロ・エスコバル:世界でもっとも有名な麻薬王の一人。70年代から80年代にかけて隆盛を極めた麻薬組織、Cartel de Mdellín(カルテル デ メデジン)のリーダー。1993年にコロンビア警察の特殊部隊に射殺され、カルテルはその後弱体化して消滅した。

そうですね。現地の人は、麻薬組織のせいで広まった「麻薬密売人などの犯罪人で溢れかえる街」というメデジンのイメージをとても恥じています。現地の人とその話題について話すと、みんなそうした印象を変えたいと言ってますね。

笹島

海外の場合、現地のことを実際に知ることがないから想像だけが膨らんで歪んだイメージが出来上がってしまうことあるよね。

心平

あと、こっちの人はみんな幸せそうに生きていますね。日本と比べると物質的に恵まれない人は多いですが、週末になると家族親類と一緒に過ごしたり、パーティーを開いたりダンスに出かけたりして楽しく幸せに暮らしていますね。こちらの労働環境も良いとはいえないようですが、通勤する人を見ても日本のように死んだ目をしている人は見たことないですね。

笹島

僕の場合はAmazonプライムで動画見ながら通勤してるから、少なくとも目は死んでいないはず(笑)。日本人はいろいろ恵まれてるけど、人生を幸せにすごしているっていうイメージはないもんね。コロンビア含めラテン系の人はとにかく前向きなイメージがあるよ。

心平
メデジンの親子

いろんなパイサに会って話を聞きまくる!

この企画の内容忘れかけてたけど、メデジンで暮らす人にインタビューしていくんだよね?

心平

そうですね。優しくて礼儀正しく、前向きに楽しく生きるメデジンの人を好きになったわけですが、職業や年齢問わず色々な人にインタビューして、日常の所感やこれまでの人生、今後の展望などを伺い、日本ではほとんど知られていないメデジンで暮らす大衆の姿を浮かび上がらせたいなと思っています。自分もまだ十分に知っているわけではないのですし、とても興味があります。

笹島

こっちとしては日常的な話題はぜひ知りたいね。例えば、貧困や格差の問題が根強く残る発展途上国の場合だったら、そこで生きる人々がいかに苦しい状況を強いられているかという「解決しなければならない問題」の話題は日本にも入ってくることがあるけど、市井の人が何を考えていてどう暮らしているかみたいな「一見どうでもいい情報」は入ってこないもんね。

心平

実際コロンビアにもそうした解決しなければならない社会的問題は色々ありますが、そうした問題についての日本語記事はすでにたくさんありますし。

笹島

食とか風俗とか音楽とか、そういう文化的な違いを知れる話題のほかにも、庶民の日々の悩みとか仕事に対する考えとか生きる糧とかも知りたいな。

心平

そうですね。悩みネタとか自分もめちゃくちゃ興味あります。例えば、自分の体にコンプレックスを持っていて多少なりとも悩んでいる日本の女性は少なくないと思いますが、こっちではあまり聞かないですね。女性に限らず男性も金とか病気で悩むことはあってもほかに悩むことあんのかなっていうくらいあっけらかんとしています。

笹島

そういう美的感覚の違いの話とかも面白いね。美容も普遍的なものだけど国や文化で結構違うだろうし。

心平

メデジンは整形している女性がわりと多いんですよ。日本の整形は自分のコンプレックスを解消するための手段っていう側面が強いと思うんですが、こっちの整形は元からある胸やお尻をより大きくさせるためのブースターっていう印象が強いですね。両者の整形の動機は「こうなりたい」っていう同じ願望だと思うんですが、日本女性は「この部分がダメからこうなりたい」と考えて、こちらの女性は「この部分をもっと強調してこうなりたい」と考える傾向にあるのかなと。いずれこういう話も詳しく聞いてみたいです。

笹島

そうだね。宿題だね。

心平

ありとあらゆる情報がネットで手に入るようになった時代ですが、そんな情報網をすり抜ける超ニッチで超トリビアルな記事、「コロンビアのメデジンで暮らす人々のインタビュー」が読めるのは303 BOOKSだけでしょうね!

笹島

需要があるかは別の話だけど(笑)。現時点では無くても、需要が生まれるような面白いコンテンツになればいいね。

心平

この企画では、メデジンのとりとめのない日常や未知を読者の方々に楽しんでもらうことを主眼としていますが、たくさんの人との対談を通して、そうした異国の些細な情報が積み重なって日本という国を見つめなおす鏡のようなものになればいいなと思っています。

笹島

異文化を知るっていうことは自分の文化を知ることと同じだからね。

心平

そういうことです!

笹島

この企画のタイトルなんだけど、アンティオキアっていうのはササジが住むメデジン市がある県のことで、パイサはアンティオキアと周辺の県を含んだ地域やそこに住む人のことだったよね? 

心平

そうですね。アンティオキアは大阪府、パイサは関西とか関西人とかって意味になります。日本に置き換えると、「夕立の大阪 関西人の生き方」になりますね。

笹島

一気にもっさりするね(笑)。

心平

・・・関西批判ですか?

笹島

いやいや、別に関西批判じゃなくて文字面とかがさ。「夕立」はどこから来たの?

心平

僕が住んでいるメデジンは夕立が多いんですよ。夕立が降る日は、ずぶ濡れになりながら帰る人や軒下で雨宿りしてる人の姿が印象的です。どんな気候かもう分かってるんだから傘くらい常備しときなよって思いますけど・・・。ただ、細かいこというとアンティオキア県の地理は多様なので、全土で夕立があるというわけではないんですけどね。メデジンではなくアンティオキアにしたのは、メデジン出身以外のパイサもインタビューしたいからです。

笹島

なるほどね。まぁメデジン出身者に限定する必要ないもんね。次回は記念すべき1人目のゲストだね。よろしくね!

心平
カラフルな壁

#3 慈悲深い年下のお姉さん フリアナ・アコスタ(1話)

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クレジット

執筆・撮影
株式会社オフィス303の元社員。黒豆で有名な兵庫県丹波篠山市出身。2017年に日本を飛び出して1年ほどラテンアメリカ諸国を行脚する。現在はライターやフリー翻訳者として働きながら超低空飛行で生き延びる。
聞き手
編集プロダクション 株式会社オフィス303の代表取締役 兼 303 BOOKSのプロジェクトリーダー。千葉県千葉市の埋めたて地出身。バイク雑誌、パズル雑誌を経て、児童書の編集者になる。本は読むものではなく、つくるものだと思っている。