憧れの出版社に就職できたものの、リモートワークが進んでいて、まだあまり先輩たちに直接会ったことがない、新人営業マン・フジタ。
「もっと本を作っている先輩たちのことが知りたいので、呼び出して話をききたい!」
営業先でのつぶやきが、書店『ペレカスブック』の店主・新井由木子さんにおもしろがられてスタートした、『先輩呼び出し企画』です。
フジタと新井さんが、先輩のお話を一緒に伺います。
絵:ペレカスブック店主・新井由木子
出版社の新入社員が先輩を本屋さんに呼び出して 本のことやその他諸々きいてみる
はじめに
ひとりめにお呼びした先輩は、303BOOKSで主に絵本を手がける小熊雅子さん。
小熊さんには何度かお会いできているのですが、実は、おそろいのiPhoneケースを持っています!
でも、サイズが違うので、所持しているだけです。
小熊さんが、通販サイトでうっかり違う機種のケースを買ってしまい、「もし使える人がいたら」と送ってくださったのですが、わたしのものにも合わなかったので、今はデスクの上に佇んでいます。すごくかわいいからもったいないので、iPhone 8 Plusを持っている人に巡り会ったら使ってもらいたいです。
今回は、そんな小熊さんが編集者になるまでのお話を伺いました。
中学生のとき、クラスで作っていた新聞の中に小さなお話やカットをかくなど、今思えば「誌面を作る」ということに興味を持ったのは、この頃だったよう。
東京の大学に進学し、誘われるままクイズ研究会に入会。
クイズ研究会も楽しかったそうですが、元々絵本や童話に興味があったので、絵本作家・梅田俊作さんの講座に通いはじめました。
そこで、絵本を作ったり、講座の友だちと旅行に行ったりして、その時点では将来のことは何も考えず、楽しく過ごしていたそうです。
大学3年生になった小熊さんは、専門に児童福祉を選びました。
子どもの施設に絵本の読み聞かせに行ったり、共同保育の手伝いをしたり、絵本と児童福祉に関わる大学生活を謳歌していました。
そうしているうちに、
「就職しなきゃいけないんだ!という時期になっちゃって」
就職先を探し始めたものの、希望していた学童保育の先生は募集が少なく、なんとなく受けた通信系の会社に就職することになりました。
働きながらも絵本や物語に関わりたい思いは変わらず、堀尾青史さんの紙芝居の教室に通いはじめます。
1年間学んだあと、紙芝居を1本、出版までしたそうです!
その後、
「絵本や、物語に携われる仕事がしたいなぁ」
という気持ちが強くなり、4年間働いた会社を退職しました。
しかし、友だちに紹介してもらうはずの出版社のアルバイトの話が流れてしまい、一気にピンチに。
「え~じゃあどうしようかなぁ、もう会社辞めちゃったし」
新聞で求人を探し、いくつか受けた中のひとつが「児童書とパズル誌の編集」と記載されていた、「303BOOKS」の前衛である「オフィス303」でした。
飯田橋にあったオフィスで面接をした際、「もうすぐ市ヶ谷に引っ越すんだよ」という話をきいて、なんとなく「ここに来るんじゃないかな?」と感じていたそう。
というのも、元々転勤族だったり、前の会社でも引っ越しが多かったり、なにかと引っ越しに縁のある人生を送っていたそうで、結局オフィス303には、引っ越しの日に入社することになりました。
しかし、児童書を担当するつもりだったのに、入社してみたら、必要なのはパズル誌の編集者だったのです。
「クイズ研究会出身だから、パズル好きに思われちゃってるみたいだけど、そもそもクイズとパズルは違うものだし……」
と不安な気持ちもあったそうですが、とりあえず本作りの基礎を身に付けよう!と決意を新たに、小熊さんは編集人生の第一歩を踏み出しました。
当時はパズル誌が30万部売れていて、かなり凝った趣向のものも掲載していたようで、
「映画『ボニーアンドクライド』をテーマにしたナンクロを、ある作家さんに依頼したとき、ボニーとクライドが受けた銃弾の数だけ黒マスのあるナンクロを作ってくださって、『黒マスに銃弾のイラスト入れてくれる?』と言われて、すごいなって」
原稿を受け取って感動する、という経験を通して、世の中には「すごい」作家がいっぱいいて、その作品を伝える仕事こそ、編集なんだと感じたそうです。
「作ること」と「編集すること」の違いを知らないまま、この世界へ足を踏み入れた小熊さんに、編集者の仕事とは何たるかを教えてくれたのが、パズル誌での仕事でした。
その後、絵本作家の荒井良二さんの講座に通って勉強しているうちに、児童書の編集を担当させてもらえるようになったそうです。
「オフィス303」が「303BOOKS」になってからも、2作の絵本を担当されています。
〈本のこと篇〉では、小熊さんが担当された『詩303P 内田麟太郎』ができるまでのお話をご紹介します。
小熊さんの歴史にある「パズル誌が30万部売れていた」時代。その頃、正にわたしも市ヶ谷にある出版社からの依頼で、作家の作ったパズルをイラストに仕立てる仕事をしていました。
もしやと小熊さんに聞いてみると、共通の編集者の名前を知っている……。随分昔のことですが、小熊さんと新井は近くにいたんですね。それがこうして自分の書店で、初めて顔を合わせることになろうとは……。人生長く生きてみるものです。
かわいらしく柔らかい雰囲気の小熊さん(トップ画ではおもしろげに描いてすいません)ですが、会話のそこここに太くて強い編集者魂を感じます。そんな小熊さんだからこそ、さまざまなおもしろい本が生まれるのかもしれません。
協力:
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