本屋B&B主催で行われた『新装版 そらのうえ うみのそこ』発売記念オンライントークショー「人類が目指した”そらのうえ・うみのそこ”」。ここでは、その模様を再現いたします。今回が第2回。本書監修者の長沼毅先生と、芸人の木場事変さん。絵本作家、大橋慶子さんもゲストで登場します! 今日はあの野口聡一さんと長沼先生の意外な交遊についての話です!
『新装版 そらのうえ うみのそこ』発売記念トークショー 「人類が目指した”そらのうえ・うみのそこ”」
長沼毅×木場事変 ゲスト大橋慶子 #1
5番目の星
突然ですが、先生がお持ちの「FIFTH STAR」っていうTシャツが気になるんですけどこれはなんですか?
これは、FIFTH STARってのは5番目の星ですよね。だから、秋山豊寛さんを除いて日本人で5番目の宇宙飛行士って意味です。私が宇宙飛行士選抜試験を受けたときに、落ちた仲間たちで作ったんですよ。
なるほど。 そのときに合格して宇宙飛行士になったのが…
野口聡一さんです。私は準決勝で落ちたんですけど、その準決勝って筑波にある宇宙センターで二人一組のペアになって一週間行動するんですけど、そのときの僕の相方が野口さんだったんです。一週間一緒にいて、受かるのは彼だなって思ってましたよ。
そうなんですね! でも、なんでですか?
彼にはちゃんとモットーがあって、英語でいうとBe preparedっていうんですが、つねに準備万端でした。もう、今すぐ宇宙行けますくらいの水準で。私なんか、まあ細かいことは受かってから勉強すりゃいいや、ぐらいに思ってたんですけど、いつも準備に余念がない人とそういう人がいたらどっちが受かるかははっきりしてますよね(笑)
じゃあ、もう選抜試験前からずっと宇宙飛行士になるために準備してたんですかね。
20歳ぐらいのときに宇宙に行きたいって思ったらしくて、そこから準備を始めたみたいですよ。大学では航空宇宙の勉強したり、卒業後はジェットエンジンの開発に携わったり、英語でコミュニケーションできるために通勤時間はFar East Network(現在のAFN) っていう米軍のラジオ放送を聞いて耳を慣らしたりと、とにかく来たるべき日に備えてたようで。
じゃあ、宇宙に行くべくして行った人なんだ。野口さんは何度か宇宙に行ってると思うんですが、今年もまた行くそうですね。
はい。今年の10月にアメリカの民間宇宙会社スペースXのクルードラゴンという宇宙船で行くんですよ。野口さんは2005年にアメリカのスペースシャトルで初めて宇宙に行ったんですが、そこで宇宙遊泳や船外活動を3回も行って活躍したんですよ。その功績が認められて、2009年にはロシアのソユーズでまた宇宙に行って、このときは263日も国際宇宙ステーションに滞在しました。
2回目はソユーズなんですね。これはなにか理由があるんですか?
当時アメリカのスペースシャトルはもう計画が終了していて、自前の手段をもってなかったんですよ。
なるほど。それでソユーズ使ったんですね。
だから、アメリカのスペースシャトルで宇宙に行って、ロシアのソユーズでも行って、で次は民間会社のスペースXの宇宙船でしょ? こんな宇宙船三冠王を成し遂げた人ほかにいないですよ。
宇宙船三冠王(笑) じゃあこれは野口さんの偉業のひとつなんですね。
そうですね、偉業といえばこのスペースXもすごいことをしてますよ。やっぱり民間で宇宙へ行くっていうのはすごいことですよね。まあ、じつは日本もそういう部分はありますけど。
え、そうなんですか⁉ 宇宙関係のミッションはJAXAがやってるんじゃないんですか?
そうなんですけど、たとえば、この前にアラブ首長国連邦の火星探査機を積んだH-IIAが打ち上がったじゃないですか。あれも、一応JAXAがやってますけど、実際のところロケットをつくって飛ばしてるのは三菱重工ですから。
そうだったんですね。じゃあ三菱重工は日本のスペースXなんだ。
ただ、スペースXがすごいのは、やっぱりイーロン・マスクがいるからですよ。三菱重工に彼のような人はいないですよね。
三菱重工も彼のような指導者が現れたら探査機やら宇宙船をバンバン飛ばす一大宇宙会社になる可能性があるかもしれない…⁉ ところで、野口さんの話に戻りますけど、今回のミッションでは何をするんですか?
6ヶ月ほど滞在するようですけど、具体的に何をするかは私も知らないです。まあ実験とかもするんじゃないですかね。
宇宙ステーションでの実験っていうワードで先生に聞きたかったことを思い出したんですけど、今回はここまでにしましょう。ということで、「そらのうえ」をめぐる話はまだまだ続きます!
プロフィール
1961年、人類が初めて宇宙へ飛んだ日に生まれる。 1989年、筑波大学大学院生物科学研究科修了。深海から宇宙、北極から南極、砂漠から高山まで、あらゆる極地で、生命について研究する。科学界のインディ・ジョーンズの異名を持つ。JAMSTEC研究員、米国カリフォルニア大学サンタバーバラ校研究員を経て、現在は広島大学大学院統合生命科学研究科教授。
1993年12月7日、長崎県波佐見町出身。プロダクション人力舎所属、お笑いコンビ「大仰天」のメンバー。日本史・ベースが趣味で、月1回、日本史のトークライブを開催している。樹海に行って歩いたり、不思議な街歩きをしたり、幅広い分野への興味や好奇心が旺盛。
岐阜県大垣市出身。武蔵野美術大学視覚伝達デザイン科卒業。イラストレーター、絵本作家として活動。東京都在住。
主な絵本に『もりのなかのあなのなか』(福音館書店)、『にんじゃタクシー』(フレーベル館)、『そらのうえうみのそこ』、『きょだいなガチャガチャ』(教育画劇)など。
構成:常松心平、笹島佑介