『海賊』とは？

1814年、イギリスの若き詩人、ジョージ・ゴードン・バイロンは一篇の長編詩を完成させた。美しい海を舞台に、海賊の首領コンラッドが躍動する『海賊』だ。この詩に描き出された冒険と愛の物語は、時代をこえて、多くの振付家の創作意欲を掻き立てた。そして時代ごとに、さまざまな振付家による、さまざまなヴァリエーション（バレエにおけるソロの踊り）が生まれてゆき、その結果、『海賊』はコンクールやガラ公演の常連として、いくつかのヴァリエーションが知られる存在となった。

しかしその一方で、バイロンが描いた詩の世界が、全幕作品として日の目を見る機会は長い間訪れなかった。

『海賊』が、全幕作品として脚光を浴びるまでには、およそ200年もの時を待つこととなる。

熊川哲也に生命を吹き込まれ
新たに誕生した傑作

『海賊』に大胆に手を加え、全幕作品として甦らせたのがKバレエカンパニーの芸術監督・熊川哲也だ。

熊川の手により、物語が編み直されると、屈強な海賊たちの壮大なアドベンチャーストーリーが姿を表した。

また音楽も、歴史上『海賊』に関わってきた６人の音楽家の作品から、物語の起承転結に呼応する曲が選び直された。

こうして生まれ変わった『海賊』は、2007年に初演を迎えると大好評を博し、Kバレエカンパニーにとって欠かせない演目となった。

熊川版『海賊』は、時を超えて紡がれてきた作品の歴史に、新たな足跡を残した。その歩みはとどまることなく、現在も続いている。