前回は繊維画という独自の技法に辿り着くまでをうかがいました。今回は繊維画のみならず、様々な技法で描かれた怜さんの作品世界について掘り下げていこうと思います。
アーティスト稲葉怜の『New season』
アートに出会う
前回紹介した『音吐』以降、繊維画を再び描くまで期間がありますよね。それはなぜでしょうか?
『音吐』で出し切ってしまった。というのが正直なところでしょうか。それで別の描き方を探しはじめたんです。
そうだったんですね。では時系列にそってそれらの作品について聞いていきたいと思います。まずこちらの作品はどのようにうまれたのでしょうか?
これは水彩やアクリル絵の具がベースで描かれていて、そのあとペンで描いてます。この頃は「にじみ」で表現することがすごく楽しかったんです。
繊維画とはまったく違う鮮烈な印象を残す作品です。こちらの作品は、まったくちがう動物ですね。
私は野生動物の持つ強さと繊細さを描くのが、好きなんです。これはアクリル絵の具で描いています。個展のお話をいただいた時にちょうどオオカミに興味がありまして、この作品 は『WIND WOLF』といって野生のオオカミを描きました。この時の個展では、他にもクマやフクロウなど森の 動物たちを描きました。
その後には繊維画でも動物を描かれてますね。
はい。元々馬が好きで、乗馬をしていたこともあり、馬をモチーフにしました。この作品では馬のたてがみを繊維で描きたかったんです。
どう見ても別のアーティストのようです。こういうのは色々試してみて、手法を見つけていくんですか?
どんな題材も手法もそのときのインスピレーションで決まります。
変化を恐れないというのもありますが、変化が必然なんですね。
オーダーやコラボレーション作品
このシリーズは「NUMBER」という代官山のカフェでの展示会に向けてN・ U・M・B・E・R という5つのアルファベットとその他好きな文字を何個か描きました。
文字を斬新な手法でアートにしているので、他の企業の広告などにも映えそうなインパクトの強い作品です。このような作品ってほかにもあるのでしょうか?
あります。個人のお客様以外にフランス料理店からであったり、ホテルの天井画であったり、依頼を いただいて作品をつくることもあります。
フランス料理店の作品は抽象的で、曲線が優美ですね。天井画はモノトーンでシャー プで、どこかエキゾチックな印象ですね。前述した作品とはまったくちがって美しい。
ここまで様々な怜さんの作品についてうかがいました。次回は個展『New season』やこれからに話を進めていきます。
「旅慣れたトラヴェラーにも愛される宿」をコンセプトに2015年6月に赤坂にオープン。以来、世界から集まった約1万人以上が宿泊した。1階のバーでは定期的にアーティストの展覧会が開催されている。