LGBTQ+に寄り添う若き実業家・田中史緒里#4

“LGBTQ+が普通”の世の中になるための目標

この記事は約5分で読めます by 遠山彩里

FtX(女性性として生まれるが性自認が未定であること)であり、女性の体型に合うメンズパターンのオーダースーツを提供するアパレルブランド「keuzes(クーゼス)」を運営する田中史緒里さん。今回は田中さんに、新事業の話や、今後の目標、田中さんが思う当事者の方へのメッセージなどを聞いていきます。

田中 史緒里(たなか しおり)
1994年、福岡県北九州市生まれ。親の転勤で住む街を転々とし、茨城県の高校に入学。高校中退後18歳で上京。2018年3月にenter合同会社を設立し、2019年12月に、女性の体に合うメンズライクなスーツブランド『keuzes(クーゼス)』をスタート。2020年11月には合同会社から株式会社に変更。
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新事業は、誓い合える場所の提供

もともと田中さん一人で始めた会社ですが、今は何人のスタッフが在籍してるんですか?

遠山

ブランドマネージャー1名と、取締役1名、あとFTMの方や、会社に在籍していなくても関わってくださってる方がたくさんいます。繋がりでウェディング会社とも今共に動いています。

田中

ウェディングは、御社がプロデュースするんですか?

遠山

知り合いのウェディング会社と協力して、クーゼスプロデュース的な感じで。リリースキャンペーンとして今回はお客さんがどういうのをやりたいのか聞いて、それをプレゼントします。

田中

※取材後、実際にスタートした新事業『keuzes wedding by HAKU

プランニングするっていう認識でいいんですかね?

遠山

そうです。とりあえずスーツだけというよりかは、まだ世にない必要なものを見つけて、それを解決して救われるものがあるならやっていき続けたいんですよね。やっぱりLGBTQ+の1、2番の悩みって恋愛じゃないですか。法で結婚できないから、結婚式をやるっていう認識がない人が多いんですよね。

田中

諦めちゃう人が多いんですね。

遠山

結婚できないのに結婚式挙って挙げれるの?って思っちゃったりするけど、結婚式っていう名前じゃなくて、式を挙げたことでお互いの進む道がそこではっきりしたらいいんじゃないかとか、そこをプロポーズの場にしてもいいし、親に見せて真剣なんだって見せる場でもいいと思っています。

田中

確かに。親孝行にもなりますもんね。実際できたらめちゃめちゃいいと思いますよ!

遠山

やばいですよね! なんか企画しながら泣きそうだもん(笑)この前アンケートとったらやりたいっていう人がたくさんいたんですよね。法で認められてないから別れる人もいる中で、二人で一緒にいることが幸せってお互いが思って、何かしらで誓い会える場所を提供できたらすごい幸せだなと思いますね。

田中

目標は、早く真似されて競合が増えること

今後のクーゼスの目標はありますか?

遠山

会社を大きくしようとかはあんまり具体的に考えてはいないんですよね。連絡をもらって、スーツをここで買うのが夢ですって言ってくれるけど、そんなことになったかっていう感じだし。単純にこの事業が他に真似されて、競合がいっぱいできて初めてこういうことが普通になっていくと思うから、まずは真似されたいんですよね。

田中

なるほど。同じようなものがたくさん増えればそれが普通になりますもんね。

遠山

真似されないと始まらない気がするんですよね。スーツでも性別って関係ないよねってなるには、多分我々だけじゃ無理で。いろんなところがここに勝てるようにいいサービスを作って、それでもっといろんな人に知ってもらって、スーツってどこでも性別関係なしに買えるようになったねってなるのが一番望んでいることです。だから真似をされたいし、困っていることを我々がいち早く気づいて、解決できるような事業をこれからもやっていきたいなと思っています。

田中

今って、レディーススーツの会社って全然ないじゃないですか。その中でクーゼスが第一歩として踏み出してて、そこから多分それが当たり前になって、どんどんそういう会社が増えて行くっていう流れに世の中がなっていったらいいですよね。

遠山

本当にそれを待っているというか、早く真似をしてくれって思ってます。

田中

当事者のためには“じゃない人”の理解が必要

田中さん自身が、同じように悩んでいる人に向けて何かメッセージはありますか?

遠山

当事者の人たちって、性別を聞かれるだけで嫌だとかの、見えないストレスをいろんなところで感じてるんですよね。でも多くの人にLGBTQ+を知ってほしくて当事者の人たち側からとんでもない勇気を出して「私はこうなんだ」って世に言わなきゃいけない。そんな状況ってなんなんだろうって疑問に感じてて。

田中

確かに、本当ならわざわざ言わなくていいことも、理解してもらうために言わなきゃいけない場面もありますもんね。

遠山

今声をあげてる人って、なにかしら辛いことがあったって人は少なくなくて、そんな中で勇気を出してっていう、すごいことをしてると思うんですよね。だから、事業や会社がうちみたいなことをやることで、当事者じゃない人たち側の理解が深まって、当事者の人たちが何もしなくても理解されるようになっていけたらいいと思うんです。

田中

当事者側だけじゃなく、当事者じゃない方の理解も重要になってくるわけですね。

遠山

はい。なので当事者の人たちには、周りの人たちは思ってるより自分のことをわかってくれるからそこまで自分のことを重く捉えないでほしいと思います。当事者の人たちというより、世の中の人たちに向けて我々が理解を深めるような形で動いていきたいと思うから、当事者の人たちは自分らしく生きてほしいなと思っています。

田中

田中さんが言うとすごくかっこよくて、頼り甲斐がありますね。

遠山

多分周りに「自分はこうなんだ」って言ってないから、もしかしたらこうやって言われるんじゃないかって悪い妄想だけ広がるんですよね。自分もそうだったんで。わざわざ説明しなくてもいい世の中になったらいいなと思っているのですが。

田中

そっか。言わなかったら当然周りも知らないし、でももし言ったらどうなるんだろうっていう不安があったんですもんね。

遠山

言わない期間に、悪い妄想がすごい繰り広げられるわけですよ。でも言ったところで案外大したことないなと。自分のことをちゃんと認めても、何が変わるわけでもなければ、なんならすごい楽だったし、そこまで重く捉えずに、中に溜め込まないでほしいなと思いますね。

田中

なるほど。あまり考えすぎず、フラットな考え方で大丈夫ということですね。世の中のためにも、これからの田中さんとクーゼスの活動に期待しています。ありがとうございました!

遠山

CREDIT

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執筆
フリーのライター兼プランナー。趣味は料理と映画鑑賞、特技は一人飲み。一人でどんなお店にでも入れるため、取材も積極的に行う26歳。人との繋がりとコミュニケーションを大切に、遊びも仕事も全力で取り組みます!
撮影
千葉県千葉市美浜区出身。世間のブームにのりたい47歳。パンダが好き。
撮影
某研究学園都市生まれ。音楽と東京ヤクルトスワローズが好き。最近は「ヴィブラフォンの入ったレアグルーヴ」というジャンルを集めて聴いている。