春は、寒さがやわらぎ自然が目覚める季節です。世界には、さまざまな春のお祭りがあります。
ウクライナに伝わるろうけつ染めで装飾された卵「ピサンキ」も春のお祝いにつくられてきました。現在では、イエス・キリストの復活を祝うイースターのイースターエッグとして親しまれていますが、その歴史はイースターよりも古いといいます。
冬の寒さがやわらぎ始めたころ、陶芸家として活動しながらピサンキを作り続けている飯野夏実さんにピサンキの魅力についてお話を聞きました。
ウクライナに伝わる卵の民芸品「ピサンキ」
ピサンキ、とても美しいですね。ピサンキのことは飯野さんの作品で初めて知りました。日本ではあまり馴染みのないものだと思うので、ピサンキについて少し教えてもらえますか?
ピサンキというのは、今戦争で問題になってますけども、ウクライナの民芸品なんですね。陶器とか、木工、金属加工のような、プロフェッショナルの仕事ではなくて、あくまで家庭の手仕事で、ふつうのウクライナの農民がつくって遊んだと言われているものが元です。
なので特殊な道具も必要なくて、本当に家庭の遊びです。日本でおばあちゃんがお手玉をつくるのと同じようなものだと思っていただけたらいいんですけど。
身近なものなんですね。
それで、ピサンキというのはお守りですね。
たとえば、家に悪い物が入ってこないように玄関に飾っておいたり、動物が病気にならないように納谷に吊るしておいたり。あと面白いと思うのは、家を建てるときに地面に埋めて、家が倒れないお守りにしたり、先祖のお墓に供えたり、そういうような、土着の素朴なお守りです。
すごく古くから伝わっているんですよね。
そうですね。多分1000年以上の歴史があるっていわれてますね。
模様にいろいろなモチーフがありますね。とてもキレイです。
模様にこめられた意味
模様には全部意味があって、たとえば、星の模様は「永遠」の意味があるといわれています。
麦の模様は「豊作祈願」、チョウの模様は復活、鳥の模様は「子孫繁栄」を表しています。
鹿の模様は、「強さ」とか、「リーダーシップ」を表しているといわれていて、だからそのお守りの用途に応じてというか。たとえば結婚する人には、この「子孫繁栄」の鳥のものを描いてプレゼントするそうです。
なるほど。
あと面白いのは、白いところが多いピサンキは、「これからの人生を自由に描いていく余白がある」みたいな意味で子どもにプレゼントしたり、はしごの模様もあって、それは「天国への階段」と言われていて、お年寄りには「幸せに天国に行けるように」という意味で、そのはしごの模様のピサンキをプレゼントしたり、いろいろな絵に意味があります。そんな感じの素朴なものです。
模様にいろいろな意味があって面白いです。日本にも昔からたくさんの模様がありますけど、さまざまな国に似たようなものがあったり、変化して伝わったりして、大陸で繋がっている感じがありますよね。
やっぱり模様はもうミックスですよね。「植物の隣に動物」みたいな模様とか世界中にありますし、ウクライナなんてユーラシア大陸の真ん中らへんだから東からも西からも影響を受けてると思いますよ。
どれも違う模様で描いていますけど、デザインはどのように考えているんですか?
やっぱり基本パターンがいくつかあって。たとえば「48の三角形」っていう模様があって。三角形の中に描かれてるものは違いますが、全部、基本パターンが一緒なんですよ。これと、これ(以下写真参照)が一緒ってなんとなくわかります?
本当だ。両方とも三角形で区切られていますね。
基本のパターンで分類すると12パターンぐらいです。それをいくつか覚えて、そこから展開形を作れるようになる感じですね。
下描きはするんですか?
おおざっぱにはします。細かいところはどんどん即興的に描いていくという感じです。
ピサンキをつくるところ、ぜひみてみたいです!
次回は、ピサンキのつくりかたをご紹介します。
陶芸家・ピサンキ作家、飯野夏実さんインタビュー
ろうけつ染めの「ピサンキ」の作り方
飯野さんは、台東区の工房「クラフトスタジオカラクサ」で月に2回ピサンキ教室を開催していて、日程の詳細はホームページで確認できます。ピサンキの道具を販売するウェブショップも運営。教室に参加したその日に道具を買って帰ることもできます。
クラフトスタジオカラクサ
https://www.studio-karakusa.com/
ピサンキ材料のお店
https://pysanky.base.shop/
飯野さんの陶芸作品の展覧会情報などはInstagramをご覧ください。