自身の実体験から、日本の性教育を変えたいという思いで活動を行う、性教育デザイナーのWayanさん。第一回目は、性教育デザイナーという職業や仕事内容を中心に、Wayanさんの友人でもある熊田がお話をうかがいました。
性教育デザイナーWayanの素顔に迫る
今日はお時間をいただき、ありがとうございます!
こちらこそ!
かねがね、個人的にWayanちゃんの「性教育デザイナー」としての活動をすごく応援していました。今日はとことん、Wayanちゃんの魅力を発信できたらと思います。
うれしい、ありがとう。
初めに、この記事を読んでくれている方に私たちの関係を説明しておくと、高校時代からの友人で、同い年なんです。
高校は別だったけど、お互いに軽音部で。その地域の高校生がよく集まる「府中Flight」というライブハウスがあって、そこで知り合ったんだよね。
あれからもう5年くらい経つけど、今こうして一緒にお仕事できるとはあの時は考えもしなかったから、感慨深いね。あらためて、よろしくお願いします!
「性教育デザイナー」って、どんな仕事?
さっそくですが、「性教育デザイナー」って、どんなお仕事かな?
小学校から高校での保健体育の内容って覚えてる? 心身の機能の発達や疫病について教えてもらったけど、詳しい内容はあまり覚えていない人がほとんどだと思っていて。
確かにそうだった。
性教育は、身体の成長や性交、妊娠出産だけではなく、人権やジェンダー、多様性、健康、人間関係などを含む包括的なものである必要があると、国際的に言われているんだよね。
うんうん。
日本ではまだこういった包括的な性教育を受けられる仕組みが整っていないので、子供から大人まで、全ての人が、平等に正しい情報にアクセスできるように、性教育の仕組み作りからデザインして行きたいと思っているんだ。
なるほど。私自身も、以前はデザイナーって、「見た目を作る人」というイメージを持っていたけど、機能性なども含めて全部デザインで、「アート」と「デザイン」は別物なんだなって、最近気づいたんだ。例えばキャリアデザインという言葉があるけど、目的に対しての過程とか、仕組み作りも含めて「デザイン」という言葉を使うよね。正直、「性教育デザイン」という言葉をイメージするのは難しかったけど、「性教育」というもの自体を作っていくということなんだね。
「性教育デザイナー」という肩書きは私が自分でつけたんだけど、包括的な性教育の重要性をクリエイティブを通してより分かりやすく伝えたり、仕組みづくりからデザインしていくのが役目だと思っています。
これまでに、どんな仕事をしてきた?
例えば今、どんな仕事をしているのかな。
最近では、「#SEOセックス」というプロジェクトのクリエイティブを担当しました。
「SEO」というのは、インターネット検索の上位にあげるための仕組み。そもそも日本では、「セックス」という単語を検索したときに、公的機関や正確な信用出来るサイトが検索上位にこないっていう問題があって。性被害者や性に関心を持った子どもが性に関するワードを検索した時に、信用性や根拠のない性知識が書かれたサイトや、アダルトサイトばかり表示されてしまうのね。
確かに、悩んだ時や困った時に知りたい、適切な情報を見つけるのが難しいよね。
私の実体験で、「性被害」と検索した時に、適切な情報どころか、「加害者が罪から逃れる方法」という情報を見てしまって、より恐怖を感じたことがあって。一方で、他国ではGoogleなどの検索エンジンがアルゴリズムを変更して、性被害にあった場合の相談窓口や、専門家の監修が入った安心出来るサイトへアクセスできるような仕組みが整っているの。
そんなことがあったんだね…。そして、他国ではそこまで進んでいるんだね。
自身が性被害にあったこと。そして適切な情報に出会えず、相談をする人がいない不安を感じた経験から、適切な情報を検索上位に上げるシステムが必要だと、強く感じたの。だからまず、国にちゃんと監修するようなものを作りたいと訴える活動をしています。これは、実際に性被害にあった大学生が主導して始まったプロジェクトで、まずは署名を集めるところから始まって。
そうだったんだね。
私がTwitterで、「日本でも、TENGAヘルスケアが運営する『セイシル』のような安心できるサイトが上位にあがって来てくれたらいいのに」とツイートしたのを見てくださって、プロジェクトメンバーの中島梨乃さんがクリエイティブを制作してくれないかと声をかけてくださいました。
ユニバーサルデザインを意識してカラーを設定したり、どのような表現をしたら良いか梨乃さんとディスカッションを重ねて、クリエイティブを考えました。
「1人でも多くの人が傷つくことが無いように」をテーマに
デザインをする時は、どんなイラストにしたらみんなが当事者として考えてくれるかとか、どういう言葉を使うのがいいかとか、そういうことを考えながらクリエイティブをつくるようにしています。「ひとりでも多くの人が」、日常的にセクシュアリティで悩む場面を少なくして行くために、デザインを通して新しい「性の」あり方を提案していきたいです。
いろいろなことができてすごい!
そして、性教育業界にクリエイターやデザイナーが全然いないので、今後包括的な性教育に精通しているデザイナーを排出していくのも、今後私が担っていきたい役目のひとつかな。
今お話を聞いていて、#SEOセックスや、性の文化祭などの案件があるとき、やっぱりWayanちゃんのように、性に関する知識や意識がある人に依頼したいだろうなと思う。性教育デザイナーって、とても需要があるね。
私はデザインも性教育もまだまだ勉強中で出来ていないこともたくさんあるかもしれないけど、1人でも多くの人がデザインされたもので傷付くことが無いように、「性」は全ての人にとって大切な問題だと思って貰えるように向き合って行きたい。
今聞いていて思ったんだけど、「1人でも多くの人が傷付くことが無いように」というのが、結構大きなテーマになってくるのかな。
そうだね。この前「クリスマスに彼氏に贈りたいプレゼント10選!」という女性に向けたクリエイティブを見て、同性カップルが居ないことにされてるなあって思ったんだよね。
小さなことかもしれないけど、このキャッチコピーで、このコンセプトで、このデザインで本当に良いのか疑うことが出来る人って案外少ないんじゃないかなと思ってる。
確かに。私も次から電車広告を見るたびに、考えてしまうかも。
女はシャンパン!男はウイスキー!みたいな広告とかね(笑)私はビールがいいんだけどってなる(笑)
私もビールがいい(笑)
性別で何かをカテゴライズするのでは無くて、どんな「性の」あり方も尊重できるよう「なプロダクト制作を意識して」います。だから、そういうことを感じさせないプロダクト制作を、とくに意識しています。
#2では、WayanさんがLGBTQ+の問題に取り組もうと思ったきっかけを、ご本人の体験談を元に、お話ししていただきます。
【取材協力】
吉祥寺第一ホテル 2階 アトリウムラウンジ
JR中央線・京王井の頭線「吉祥寺駅」から徒歩5分。2階中央のアトリウムに位置する、日当たりの良い落ち着いた空間で、軽食や喫茶を楽しめる。