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引っ越しをするので、本棚の本をダンボールに詰めている。引っ越したあとのことも考えてジャンル分けをしていたら、ねこが出てくる絵本のコーナーができた。大好きなねこたちだ。ちょっとだけなら、と読みはじめて3冊目。
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引っ越しの邪魔をする、ねこの絵本
『Rich Cat, Poor Cat』
絵本のなかのねこを飼えるとしたら、あなたはどのねこを飼うのか、と聞かれたら(だれにも聞かれないと思うけど)、答えは決まっている。
ホレイショだ。
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エリナー・クライマー 文 ロバート・クァッケンブッシュ 絵
阿部公子 訳(こぐま社)
ホレイショとは、距離をとるのがむずかしい。表紙のしかめつらを見ると、「キャー、ホレイショ~」と呼びかけそうになる。表紙の写真を撮るのも、正面から、右から、左からと、うきうきして楽しい。この感覚は「ミーハー」だ。ホレイショにはミーハーになってしまうのだ。
ホレイショはちょっと太り気味の、中年のおじさんねこ。だっこされるのがきらいで、人間にかわいがられたいなんて、ちっとも思っていない。むしろ、人間には自分のことを「そんけいをこめてあつかってほしい」と思っている。
しかめつらをして不機嫌な理由は、飼い主のケイシーさんが、だれにでもやさしくて、のらの子犬や羽をケガした鳩など、こまっている動物を次々と家にむかえいれてしまうから。ホレイショからすれば、「いったい、ここはだれの家なんだ?」となる。そしてある日、ホレイショは「もううんざりだ」と家を出てしまうのだ。
ここからがホレイショの見せ場なのだけど、家出をしたホレイショがその後どうなったのかは、読書のお楽しみにとっておきたい。この本は今も書店で買うことができる!
この本で、ホレイショと同じくらい好きなのが、飼い主のケイシーさんだ。ケイシーさんのところへ行けば心配ない、そう信頼される大人は、なんてかっこいいのだろう。youtube で、保護されたのらねこがミルクをもらい、お風呂に入れられ、健やかになっていく動画がある。のらねこの剣のあった目つきが和らぎ、鳴き声まで変わる。安心しきってとろけたように眠る姿には、じいんとする。動物を助けるのは、簡単なことではないだろう。今もどこかで動物を助けている、全てのケイシーさんを、私は尊敬する。
最後のページまで読んで、あらためて表紙を見ると、きっとホレイショに「キャー」と言いたくなるにちがいない。しかめつらもご愛嬌、ちっともこわくないぞ、キャー。もうすぐとろけそうなホレイショが大好きだ。やっぱり読んでよかった。ダンボールには入れないで、ちょっと飾っておこう。
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