コロンビアで暮らす元303社員、ユースケ“丹波”ササジマが現地に暮らす市井の人々にインタビューしていく連載企画。今回も引き続き日本語が大好きなケリーちゃんさんにインタビュー。日本語との出会いやホームステイ先として日本人を受け入れたことなどについて伺いました。
夕立のアンティオキア ―パイサの生き方―
ユースケは何しにコロンビアに?
アニメで日本語を知り昭和歌謡にハマる
日本語を勉強してらっしゃるということですが? どういう形で日本語に出会ったのですか?
高校を卒業して英語を勉強してたときに、友人からあるアニメを勧められてたんですよ。そのアニメはたしか『デスノート』だったと思います。すごく面白くてすぐに引き込まれました。
日本語を学んでる海外の人の中ではアニメが日本語との出会いっていうパターンが多いですよね。
そうですね。そのアニメを見てたら、日本語の響きが気に入って日本語を勉強をはじました。それから、日本の伝統的な文化とか音楽が知りたくなっていろいろ調べてたら昭和歌謡とか演歌に出会って、それがすごい好きになりました。今でもカラオケ※で歌いますよ。
※こちらの「カラオケ」は、バーや自宅にてYouTubeで目当ての曲のカラオケバージョンを流して歌うことをさす。日本のように個室で仕切られたカラオケをするため専用の施設はない。
へぇー、どんな曲歌うんですか?
美空ひばりとか石川さゆり、坂本冬美とかですね。いまは山口百恵がすごい好きです!
ビッグネームばっかりだ! やっぱりいい歌手は言語の壁を超えますね。ちなみに、日本語はどうやって勉強してるんですか?
はじめはEAFIT大学の日本語クラスで勉強しました。その日本語クラスには日本人のバックパッカーとかが見学に来ることがあるんですけど、そのときに日本語で日本人と話すクラスメイトを見て自分も話せるようになりたいって思って毎日4時間くらい勉強するようになりました。
それがモチベーションになったと。もう日本語だいぶ話せるようですけど、どれくらい日本語勉強してますか?
3年くらいですかね。
まだ3年くらいなんですね。ちなみに私は関西出身で関西弁を話すんですけど、方言とかも勉強してますか?
はい、大阪に行ったこともあって、関西弁が好きです! 関西弁の本も買いました。
大阪弁の教材ですか、いいですね。ちなみに私の関西弁は大阪弁とは少し違って京都弁っぽい感じなんですよ。
「おこしやす」的な・・・?
おこしやすは京都の一般人でもあんまり使わないですよ(笑)。まあ系統としてはそっち系です。大阪弁よりも少しマイルドに聞こえると思います。パイサ弁も関西弁みたいに地域によって違いますよね?
そうですね。たとえば、メデジンとかの都市部にいる人と地方の村の人で使う言葉とかはちがいます。
村で思い出しましたけど、こっちの村とか町ってヤンキーがいないですよね。今はもう少なくなりましたけど日本では地方にいけばヤンキーがいるんですが、メデジンみたいな都市部でも地方の村とか町とかでもあんまり見たことないですけど。
いやいや、いっぱいいますよ!
いるんですか・・・? そのヤンキーってどんな人たちですか?
いつも服の着こなしはだらしなくて、言葉遣いが悪くて、タバコとかマリファナとか吸ってて、学校で気に入った女の子がいたら「俺のバイクでどっか行かない?」とか言ってるような人ですかね・・・。あと、ヤンキーのバイクはAKT※っていうメーカーのが定番です。ノーヘルもマストですね(笑)。
※AKT(アカテ)とは、バイク市場を支配していた日本やヨーロッパのメーカーに対抗するために設立されたコロンビアのバイクメーカーである。おもに中国本土や台湾からパーツを輸入して組み立てたものを販売している。価格はお手頃でヤンキー以外の一般人にも人気がある。
マリファナ以外やってることは日本のヤンキーと一緒だ(笑)。
日本を知るために日本人を受け入れることも
話を日本語に戻しますけど、今も大学の日本語クラスで勉強してるんですか?
いや、もうその日本語クラスは修了して、今は独学です。本で勉強したり独りで日本語を話したりとかしてますね。実家でホームステイしたい日本人を受け入れることもあるんですけど、そういうときにいろいろ教えてもらいますね。
ホームステイの受け入れをしてるんですね。
はい、日本語だけじゃなくて日本の文化もいろいろ知りたいので。今までで7人くらい受け入れましたね。だから、7人の日本人のお姉さんがいます!
いいですねー。ホームステイした人はみんな女性なんですか? まぁ、けどそれはそうか・・・。
そうですね。お父さんが厳しいので、受け入れてもいいけど女性だけっていう条件だったので。
僕も泊まれないですか?
佑介さんには住む場所があるし奥さんがいるしうちに泊まる意味が分からないし、ダメです(笑)。
でも、ご自宅お邪魔した時、ケリーちゃんのお父さんはいつでもおいでって言ってくれたけど?
泊まっていいなんて一言も言ってません!
冗談です冗談です(笑)。ところで、日本人を受け入れていろいろ学べた?
もちろん! たくさん学べました。日本語を教えてもらう代わりに、私はスペイン語を教えたりメデジンの観光案内をしたりしました。
そうだよね、なんかいろいろ詳しいもんね。 どういうところ連れていったの?
いろんなところに行きました。何人もの日本人を案内してるんでもうツアーガイドができるくらい(笑)。博物館とか、メデジンじゃないですけどグアタペとか。
メデジンはいろいろ観光スポットあるけど、外国人だけで行かないほうがいいところもあるからケリーさんガイドしてくれたら助かるでしょうね。スペイン語があまり喋れないならなおさら。ちなみにホームステイしてた日本人は学生?
学生やバックパッカーですね。日本語コースで授業の見学に来てた人や日本語クラブで知り合った人ですね。
日本語クラブっていうのは?
大学の日本語教師の方が主催してる日本文化を学ぶサークルなんですけど、そこに日本人の旅行者が見学に来ることがあるので、それでって感じですね。
なるほど。そうやって出会った日本人の方と、それぞれの文化を教えあうっていうのはケリーちゃんにとってはすごい楽しいと思うけど、ご両親にとってはどうなの?
両親もすごくいい経験って言って楽しんでくれてる。自分の子どものように愛情を持って接してくれてるし、お母さんにいたっては美空ひばりの『川の流れのように』を歌えるようになるくらい日本文化のことも気に入ったみたい。
そういえばお母さん歌ってたね。しかも結構上手だったよ。
日本に帰るってなったときに帰りたくなくて泣いちゃう人もいたんですけど、愛情をもって接した子が、泣いちゃうほど自分たちをコロンビアの家族のように慕ってくれるのも嬉しいって言ってましたね。あと、私が日本語を通して明るく社交的になっていくのを見るのも幸せらしいです。
ケリーちゃんは元々明るくて社交的じゃなかったの?
日本文化に興味あったり日本語勉強したりしてる人って一般的に引っ込み思案で内向的なんですよ。私もその例に漏れなかったんですけど、日本語を通して性格がより明るくなったと思う。
日本語がケリーちゃんを変えたんだね。なんかその部分は大事そうだからまた後半聞こうかな。