BACK TO MY TOKYO

オタクより愛をこめて

この記事は約6分で読めます by 野田浩樹

新型コロナウイルスが日本国内で猛威を振るい初めて、はやくも半年がすぎました。東京の街は依然として輝きを取り戻せていません。外出する人の数は減り、自分の好きだったお店も苦戦していて、場合によっては閉店してしまっています。
そんな東京を応援すべく、303 BOOKSの我々が自分の愛する「マイ東京」を紹介していきます。

こんにちは、野田です。

のだひろき
野田 浩樹

東京生まれ。ブルーベリーを育てる事と動物が好きなナイスガイ。世界ネコ歩きは毎週欠かさず見ている。プログラマーをしていたはずが、なぜか47にして営業に。

    東京を応援する、ということで自分の好きな東京の街を紹介するこの企画。東京生まれで東京育ち、バリバリのシティーボーイ(アンクル?)であるこの私のためにあるかのような企画じゃないですか。もうバッチリ紹介しちゃおうじゃないですか。

    と、意気込んでみたものの、東京って移り変わりの早い街なんですよねー。私の愛した〇〇は死んだ! みたいなのがいっぱいあるんですよ。

    これはなまじ昔を知ってるおっさんには難しいお題なのかも・・・などと考えていたら、ピッタリの街があるじゃないですか。変化しない街ではなく、変化してるけどそれも含めて好きな街が。はい、勘のいい人は気が付きましたね。そうです、秋葉原です。イメージ通りじゃんとか思った不埒な輩は逮捕されてしまえ。

    コロナで閑散とした秋葉原。早くかつての賑わいを取り戻してほしい。

    なぜ秋葉原なのか? それはこの街がオタクの街だからなんです、って書くと思いっきり誤解されますね。違うんですよ、聞いてくださいよ。

    まず、この街は電気街「でした」。過去形で偉そうに書いてますが、調べてみると私が子供のころの秋葉原は、電気街から違う街に既に移行していたようなんです。

    なので電気街であった頃の秋葉原を正確には知らないようなんです。私が知ってる秋葉原はパソコンの街になった(なりかけてた)頃のようです。

    この頃は8ビットPC全盛期で、NECからPC-88、シャープからX1、富士通からFM7といったシリーズのマシンが出ていて、これが御三家でした。

    ちなみにこの3種類のシリーズに互換性はないという、ユーザーにはまったく優しくない時代です。間違って目的に合わないメーカーのマシンを買ったら一大事なのですが、そもそもこの頃パソコンを買うような人はオタクばかりなのでそんな悲劇はまず起こらないというね。つまり、パソコンオタクの集う街だったんです。

    もちろん店員もオタクが揃っています。ちょっと質問をしたらしゃべり始めて50分(!)、パソコンの話を聞かされた事があります。時計を見ていたのでこの時間は間違いないし盛ってないんですよ。こちらにできることは「はあ」「そうなんですか」とあいずちを打つだけ。当時はそれほどパソコンの知識もなかったため、何を言ってるのかよくわかりませんでした。

    そうかと思うと、STEPというサービスを徹底的に拒否することによって人件費を抑え、その分をパソコンの値段に還元するというお店があったりね。「5つのNO!」というサービスの拒否が有名でした。店員に質問する事が許されないパソコンショップなんですよ。

    お店の前に貼ってある値段表と自分の欲しいPCの型番を見比べ、注文番号をカウンターで告げることだけが許されていたんです。こんなお店、秋葉原以外ではまず無理だろ、と思ったのを覚えています。

    とまあこんな感じで、90年代初めくらいまでの秋葉原はパソコンの街でありパソコンオタクの街でした。パソコン関連でゲームなどを取り扱う店も多く、私にとってはパラダイスでしたね、本当に。え、STEPのその後ですか?

    あなたの想像通りになりましたYO。

    秋葉原といえばラジオ会館。

    90年代中頃からはアニメ色が強くなってきたかなー。ゲーム好きとアニメ好きが被ることが多い、ということが知れ渡ってきたからじゃないかと思っていますが、アニメを扱うお店が増えた印象です。

    私は社会人になって自分で使えるお金が増えたので、「LD(レーザーディスク)ジブリ全集」「LDボトムズ全話」「LDファーストガンダム全話」と、満喫してましたね。オノデンメディア館にはお世話になりました。あれ、石丸電気だったかな。

    いやー、前の会社がかなりブラックだったんでね、ストレス解消しないとやってられなかったんですよ、ほんと。あ、でも今もやってることは変わらないかな? つまり弊社もブラックぶれない男なんですかね、知らんけど。

    で、2000年代からメイド喫茶が登場し、今の秋葉原のイメージ通りになったわけなんですね、ちょろっと調べたところによると。誤解されることが多いのですが、メイド喫茶は行ったことがないのでまったく詳しくないんですよ。なんか気が付いたらあった、みたいな感じで。

    なんかマイクで呼び込みやってるお店があるなーと思ったら「萌え萌えキューン」とかハートマークを胸の前で作りながら言ってて、聞いてるこっちが恥ずかしくなったりね。実寸大のスコープドッグ(ロボット)が飾ってあるお店なら間違いなく行くんですけど。

    で、AKB劇場ができたのが2005年、ここら辺からアイドルが加わったんですかねえ。こっちもまったく詳しくないのでよくわかりませんが、歩行者天国で過激なパフォーマンスをしている地下アイドル(?)がいたとかなんとか。

    メイドさん目当てに秋葉原までやって来る欧米人もいるのだとか。元々そちらの文化でしょ(笑)。

    と、ここまで秋葉原の変遷を書いてきましたが、変わってない物もあったりします。ベースになった電気街ですね。総武線のガード下にトランジスタやら抵抗やらコンデンサーなんかが一坪二坪のお店に並んでいるのですが、ここは必見です。

    私はパソコン(というかプログラム)はそこそこ知識があるのですが、電気についてはあまり詳しくないのです。当然回路図を見ても「これが抵抗で・・・これがスイッチで・・・あとはわからん」程度です。

    以前会社の子に付き合ってネットにあった回路図を持って秋葉原のガード下に行ったことがありました。で、お店のおっちゃんに「すみません、〇〇って部品を探しているのですが・・・」と話してみると、「うーん、うちにはないなあ。△△ならあるけど、代用できない? 回路図はある?」と言われ、見せると「うん、これなら△△で大丈夫、それからこの部品はあそこのお店、この部品はあっちのお店・・・」といった感じで、ガード下で全部揃ってしまいました。

    しかもどのお店も回路図を見せると該当する部品がなくても「これで代用できるよ」と教えてくれました。あそこのおっちゃんおばちゃんは、自分のお店の食材の料理方法を教えてくれる八百屋さんや魚屋さんよろしく、回路図を見て代替品を教えてくれるんですよ。あれは凄かった。秋葉原の魂を見た気がしました。

    何だかよくわからない物がとにかくたくさん並んでいる。昔から変わらない秋葉原のワンシーン。

    とまあ自分の知ってる秋葉原をつらつらと書いてみましたが、どうでしょう。オタクと言っても「電気」「パソコン」「ゲーム」「アニメ」「(メイドなど)コスプレ」「アイドル」と多岐にわたっているのがおわかりいただけたでしょうか。

    正確にはこれに「フィギュア」「ボードゲーム」などニッチなジャンルが追加されるんで本当に混沌としていますが、これらいろんなオタクの欲望を満たしてくれる街なんですよ。しかも客だけじゃなく店側もオタクという。

    新宿の歌舞伎町は混沌とした欲望の街と言われますが、秋葉原も違う意味で混沌とした欲望の街なんですよ。こっちの欲望は物欲ですが。資本主義を体現化した街と言いますか。ウォール街ほどスマートじゃないのもいい感じ。いやウォール街なんて行ったことないですけど。イメージだけで適当に言ってみましたけど。

    ここには書ききれませんでしたが、他にも「ギャラリーに呼び込む絵を売る女性」「いつも閉店セールをしている時計やバッグを売る店」など、怪しい物がてんこ盛りのこの街、本当に魅力的な街なので、ぜひ一度足を運んでみてください。

    応援のつもりで書いてみましたが、これ味方を背後から撃つフレンドリーファイアになってるような気がしなくもないな・・・。

    バックナンバー

    BACK TO MY TOKYO

    CREDIT

    クレジット

    執筆・編集
    東京生まれ。ブルーベリーを育てる事と動物が好きなナイスガイ。世界ネコ歩きは毎週欠かさず見ている。プログラマーをしていたはずが、なぜか47にして営業に。
    イラスト
    1994年、福岡県生まれ。漫画家、イラストレーター。第71回ちばてつや賞にて「死に神」が入選。漫画雑誌『すいかとかのたね』の作家メンバー。散歩と自転車がちょっと好きで、東京から福岡まで歩いたことがある。時代劇漫画雑誌『コミック乱』にて「神田ごくら町職人ばなし」を不定期掲載中。