内田麟太郎の詩 303P

「風に」

詩人で絵詞作家の内田麟太郎さんは、
日常の何気ないできごとに詩を感じ、
ノートに書きとめるようにFacebookに投稿する──。

思わず笑ってしまう詩、心に優しく染み入る詩、
ふと誰かのことを思い出してしまう詩。
そんな内田麟太郎さんの詩を、
みなさんが一週間を乗り切る力になればと、
毎週月曜日に1編ずつご紹介します。

内田麟太郎さんのFacebook

風に

雲は
行きたいところへは行けない
ただ風にはこばれていく
風に身をまかせて

鳥は行きたいところへ行く
シマウマも行きたいところへ行く

でも
雲は鳥よりも
高い山をこえたことがある
シマウマよりも
ひろい草原を旅したことがある

雲は
より高い山をこえたくて
よりひろい草原を旅したくて
風に身をまかせる

信じることで
出会えた世界がある
行きたかったところよりも
もっと来たかったところに

雲は
風にはこばれていく


うちだりんたろう
内田麟太郎

1941年福岡県生まれ。詩人、絵詞(えことば)作家。『さかさまライオン』で絵本にっぽん賞、『うそつきのつき』で小学館児童出版文化賞、『がたごとがたごと』で日本絵本賞、詩集『ぼくたちはなく』で三越左千夫少年詩賞を受賞。他に絵本「おれたち、ともだち!」シリーズなど著作多数。

イラスト

かいややすみ
海谷泰水

文化服装学院ファッション工芸科、同研究科卒業 。llustration誌The Choice 2008年準入選。TIS公募 2007年入選、2009年金賞受賞。著書に絵本『とびっきりのごちそう』、『みんなともだち』(作:二宮由紀子)、「おしえて!コロ和尚 こどものどうとく」シリーズなどがある。